間違ったハラスメント対策が、現場を窮屈にしている

コミュニケーション

はじめに

間違ったハラスメント対策が、現場を窮屈にしている会社があります。

ハラスメント対策というと、多くの会社がまず考えるのは、禁止事項です。

あれはダメ。
これはダメ。
それも言ってはいけない。

もちろん、やってはいけないことを明確にするのは大切です。

暴言、人格否定、威圧的な態度、無視、過度な叱責。
こうした行為は、当然なくすべきです。

ただし、ハラスメント対策を「禁止事項の徹底」だけで考えると、現場では別の問題が起きます。

何を言っても問題になるかもしれない。
注意したらハラスメントと言われるかもしれない。
だったら、何も言わない方が安全。

こうして、必要な注意や指導まで止まってしまうのです。

ハラスメント対策は、現場を窮屈にするためのものではありません。
本来は、安心して、必要なことを伝え合い、互いにイキイキと働ける現場をつくるためのものです。


ハラスメント対策を「禁止事項を増やすこと」と考えていないか

ハラスメント対策で、禁止行為を明確にすることは必要です。

しかし、それだけでは現場は良くなりません。

なぜなら、禁止事項を増やすだけでは、管理職は「何をしてはいけないか」は分かっても、「では、必要なことをどう伝えればよいのか」が分からないからです。

現場の管理職は、日々いろいろな場面に向き合っています。

遅刻が続いている。
報告が遅い。
仕事の基準が下がっている。
周囲に悪影響を与えている。
お客様対応に問題がある。
チーム内の連携を乱している。

こうした場面では、本来、必要な注意や指導が必要です。

しかし、ハラスメントを恐れすぎると、管理職は踏み込めなくなります。

「これは注意していいのか」
「どこまで言っていいのか」
「言い方を間違えたら問題になるのではないか」

そう迷った結果、何も言わない方を選ぶ。

これが現場を弱くします。

禁止事項は必要です。
ただし、禁止事項だけでは、管理職は現場で判断できません。

必要なのは、「何をしてはいけないか」だけではなく、「会社として何を大切にするのか」という判断の軸です。


注意しないことは、優しさではない

最近の現場では、「言わない管理職」が増えているように感じます。

注意しない。
踏み込まない。
見て見ぬふりをする。
本人に嫌われないようにする。

一見すると、優しい管理職に見えるかもしれません。

でも、必要なことを伝えないことは、本当の優しさではありません。

問題行動が放置される。
真面目な人に負担が寄る。
若手の成長機会が失われる。
現場の基準が下がる。
管理職自身も、後で大きな火消しをすることになる。

これは、現場ではよく起きています。

何も言わない方が、その場は穏やかです。
トラブルにもなりにくい。
部下との関係も悪くならないように見える。

でも、問題はなくなっていません。

むしろ、静かに深くなっています。

ハラスメント対策を理由に、必要な指導まで止めてしまうと、現場は安心するどころか、働きづらくなります。

なぜなら、ちゃんとやっている人ほど我慢することになるからです。


本来のハラスメント対策とは何か

本来のハラスメント対策は、「何も言わない職場」をつくることではありません。

また、「管理職が部下に遠慮する職場」をつくることでもありません。

本当に必要なのは、言ってはいけないことをなくしながら、言うべきことは適切に伝えられる職場をつくることです。

そのためには、禁止事項だけでは足りません。

会社として何を大切にするのか。
どのような働き方を大切にするのか。
どのような行動を良しとするのか。
どのような現場をつくりたいのか。

こうした判断の軸が必要です。

そして、その判断の軸になるのが、会社の理念や方針です。

ただし、理念や方針は、掲げているだけでは現場では使われません。

「お客様を大切にする」
「仲間を大切にする」
「誠実に仕事をする」
「チームで成果を出す」

こうした言葉は大切です。

しかし、それを現場の業務レベルに落とし込まなければ、管理職は日々の指導やフィードバックに使えません。

接客では何を大切にするのか。
報連相では何を守るのか。
ミスが起きたとき、どう向き合うのか。
注意が必要な場面で、何を基準に伝えるのか。
新人や若手に、何を学ばせるのか。

ここまで落とし込んで、初めて理念や方針は現場の判断軸になります。

ハラスメント対策は、禁止事項を増やすことではありません。
会社が大切にする理念や方針を、現場の判断と行動に落とし込むことでもあるのです。


管理職に求められるのは、禁止事項の暗記ではない

現場の管理職に必要なのは、禁止事項を丸暗記することではありません。

もちろん、やってはいけないことを理解することは必要です。

ただ、それだけでは足りません。

管理職に求められるのは、会社として大切にしている理念や方針を、現場の行動に翻訳して伝えることです。

たとえば、部下の報告が遅いとき。

ただ「ちゃんと報告しろ」と言うだけでは、感情的な注意になりやすい。
逆に、何も言わなければ、報告の基準は下がります。

必要なのは、

なぜ報告が必要なのか。
遅れることで誰にどんな影響があるのか。
会社としてどのような仕事の進め方を大切にしているのか。
次からどう行動してほしいのか。

ここまで伝えることです。

これは、単なる注意ではありません。
会社の理念や方針を、現場の行動に落とし込む関わりです。

管理職がこれをできるようになると、ハラスメント対策は「言ってはいけないことリスト」ではなく、現場を良くするための土台になります。


これは管理職本人だけの問題ではない

ここで大事なのは、管理職本人だけを責めて終わらせないことです。

「最近の管理職は注意できない」
「若手に遠慮している」
「言い方が分かっていない」
「もっとしっかり指導してほしい」

そう見える場面はあると思います。

ただし、本質は管理職本人の弱さだけではありません。

会社として、何がハラスメントで、何が必要な指導なのかを整理できているか。
会社として大切にする理念や方針を、現場に渡せているか。
管理職が迷ったときに相談できる体制があるか。
注意やフィードバックの型を持たせているか。

ここが曖昧なまま、「ハラスメントに気をつけて」とだけ言われても、管理職は動きにくくなります。

つまり、会社が現場リーダーに拠り所を渡せていないのです。

現場任せ、個人任せにしている限り、管理職の関わり方はバラバラになります。

強く言いすぎる人。
何も言わない人。
自分で抱え込む人。
見て見ぬふりをする人。

これでは、現場は安定しません。

ハラスメント対策を現場に機能させるには、管理職本人の努力だけでなく、会社としての支援が必要です。


会社として整えるべきこと

会社として整えるべきことは、難しい制度を作ることだけではありません。

まず必要なのは、ハラスメント対策を「禁止事項の徹底」だけで終わらせないことです。

やってはいけないことを明確にする。
その上で、会社の理念や方針として何を大切にするのかを示す。
さらに、それを管理職が現場の業務レベルに翻訳して伝えられる状態をつくる。

この流れが必要です。

管理職には、次のような力が求められます。

事実と感情を分けて伝える。
人格ではなく、行動に焦点を当てる。
会社の理念や方針とつなげて伝える。
部下の改善につながるように関わる。
迷ったときに一人で抱えず、相談する。

こうした力は、管理職個人のセンスだけに任せるものではありません。

会社として育てる必要があります。

1on1や面談をする。
注意・フィードバックの型を持つ。
管理職同士でケースを共有する。
上司や人事が、現場リーダーの判断を支援する。
理念や方針を、現場での行動に落とし込む。

ここまで整えて、初めて管理職は安心して必要なことを伝えられるようになります。

ハラスメント対策は、管理職を黙らせるためのものではありません。

管理職が、言ってはいけないことを避けながら、言うべきことを適切に伝えられるようにするためのものです。


おわりに

ハラスメント対策は、禁止事項を増やすことではありません。

現場を窮屈にするためのものでもありません。

もちろん、やってはいけないことを明確にすることは必要です。
しかし、それだけでは現場は良くなりません。

むしろ、禁止事項ばかりが増えると、管理職は動きにくくなります。

何を言っても問題になるかもしれない。
注意したらハラスメントと言われるかもしれない。
だったら、何も言わない方が安全。

その結果、必要な注意や指導が止まり、問題行動が放置され、真面目な人に負担が寄り、若手の成長機会も失われます。

本来のハラスメント対策は、安心して、必要なことを伝え合い、互いにイキイキと働ける現場をつくるためのものです。

そのためには、会社として大切にする理念や方針を、単なる言葉で終わらせず、現場の判断軸として使える状態にする必要があります。

そして、その理念や方針を、日々の業務、注意、指導、面談、フィードバックに翻訳して伝える役割を担うのが、現場の管理職です。

ハラスメント対策を、禁止事項の徹底で終わらせない。
管理職が必要な指導を避ける職場にしない。
言うべきことを、適切に伝えられる現場リーダーを育てる。

ここまで整えてこそ、ハラスメント対策は現場で機能します。


現場リーダー育成に課題を感じている企業様へ

ハラスメント対策が、禁止事項の周知だけで終わっている。
管理職が、どこまで注意してよいか迷っている。
理念や方針はあるが、現場の行動に落とし込めていない。
店長・SV・係長・主任が、必要な指導やフィードバックを避けている。

このような課題を感じている企業様は、一度、現状を整理することをおすすめします。

現場リーダー育成の課題は、表面的には「本人の意識」や「コミュニケーション能力」の問題に見えます。

しかし実際には、会社としてどのような現場をつくりたいのか、何を大切にするのか、管理職にどのような関わり方を求めるのかが曖昧なことに原因がある場合も少なくありません。

現場リーダー育成・管理職育成に課題を感じている企業様は、以下のフォームよりご相談ください。

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貴社の状況を伺ったうえで、現場リーダー育成のどこに詰まりがあるのか、どこから整えるべきかを整理します。

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