肩書きと権限で部下を動かす管理職が増える会社の問題

コミュニケーション

はじめに

部下を動かす方法には、大きく二つあります。

一つは、上下関係で動かす方法。
もう一つは、信頼関係で動かす方法です。

上下関係で動く部下は、あなたの「役職」を見ています。

店長だから。
係長だから。
上司だから。

だから、とりあえず従う。

一方で、信頼関係で動く部下は、あなたの「人」を見ています。

この人の言うことなら考えてみよう。
この人には相談しても大丈夫。
この人は自分を見てくれている。

そう感じて動きます。

どちらも、表面的には「部下が動いている」ように見えるかもしれません。

しかし、現場の自走力という意味では、まったく違います。

肩書きと権限だけで部下を動かす管理職が増えている会社では、部下は受け身になります。
本音を言わなくなります。
上司がいないと動きが鈍ります。
そして、現場リーダーに役職は与えても、人を動かす方法までは教えられていない状態が続きます。

これは、管理職本人の人柄だけの問題ではありません。

会社として、どのような現場リーダーを育てるのか。
そして、その管理職が現場でどう部下と関わるのか。

そこまで整えられているかどうかの問題です。


肩書きがあれば、部下は動く

正直に言えば、肩書きがあれば部下は動きます。

店長から言われた。
係長から指示された。
SVから確認された。
部長から言われた。

だから動く。

これは現場ではよくあることです。

役職には一定の力があります。
指示命令系統も必要です。
上下関係そのものが悪いわけではありません。

問題は、管理職がその力だけに頼ってしまうことです。

「上司だから言うことを聞くはず」
「役職があるから動かせるはず」
「指示すればやるはず」

こうした前提で部下に関わると、部下は表面上は従います。

しかし、本当に納得して動いているとは限りません。

言われたことだけをやる。
自分から考えない。
困っていても相談しない。
不満があっても言わない。
上司がいないと手を抜く。

これが現実です。

上下関係だけで動く現場では、部下は受け身になります。

そして、その受け身の状態を見て、管理職はまたこう言います。

「うちの部下は主体性がない」
「言わないと動かない」
「自分で考えない」

でも、そもそも自分で考え始める関わり方をしていない可能性があります。


信頼関係で動く部下は、受け身になりにくい

信頼関係で動く部下は、ただ仲が良いということではありません。

ここは勘違いしてはいけません。

信頼関係とは、部下に好かれることではありません。
何でも優しくすることでもありません。
言いたいことを我慢して、嫌われないようにすることでもありません。

現場で必要な信頼関係とは、

見てくれている。
聴いてくれている。
任せてくれている。
言うべきことは言ってくれる。
困ったときには支援してくれる。

こうした日々の積み重ねで生まれるものです。

部下は、上司の肩書きだけを見ているわけではありません。

この人は、自分のことを見ているか。
この人は、都合よく使おうとしていないか。
この人は、言うことに一貫性があるか。
この人は、相談したときにちゃんと向き合ってくれるか。

そういうところを見ています。

そして、信頼関係がある現場では、部下の動き方が変わります。

言われたからやるのではなく、意味を理解して動く。
怒られないためではなく、期待に応えようとして動く。
指示待ちではなく、自分で考えて動こうとする。
困ったときに、早めに相談する。
注意やフィードバックも、受け取りやすくなる。

これは、単なる人柄の問題ではありません。

人を動かす関わり方の問題です。


現場で起きている3つの問題

肩書きと権限だけで部下を動かす管理職が増えると、現場では大きく3つの問題が起きます。

1. 部下が指示待ちになる

まず、部下が指示待ちになります。

上司の指示がないと動かない。
確認されるまで報告しない。
自分で判断しない。
言われたこと以上のことをしない。

この状態になると、管理職は常に指示を出し続ける必要があります。

結果として、上司だけが忙しくなります。

本来、現場リーダーの役割は、自分が動き続けることではありません。
部下が自分で考え、動ける状態をつくることです。

しかし、肩書きで動かす関わり方が続くと、部下は「言われたことをこなす人」になっていきます。

2. 本音が上がってこない

次に、本音が上がってこなくなります。

部下は、肩書きで動かそうとする上司に本音を言いません。

困っていても言わない。
不満があっても言わない。
違和感があっても飲み込む。
辞める直前になって、初めて問題が表面化する。

会社としては、かなり怖い状態です。

面談をしている。
1on1もやっている。
声かけもしている。

それでも本音が出てこない会社があります。

その原因は、面談の回数が少ないからだけではありません。

普段の関わり方の中で、部下が「この人には話しても大丈夫」と感じられていない可能性があります。

信頼関係がないまま面談の場だけつくっても、部下は本音を出しません。

面談は、信頼関係をつくる場でもありますが、普段の関わり方の結果が表れる場でもあります。

3. 注意やフィードバックが効かなくなる

三つ目は、注意やフィードバックが効かなくなることです。

信頼関係がない状態で注意をすると、部下は内容よりも先に、言われ方や立場に反応します。

「また上から言われた」
「どうせ自分のことをわかっていない」
「結局、押しつけられているだけだ」

そう受け取られてしまう。

すると、管理職はだんだん注意しづらくなります。

強く言うとハラスメントになりそう。
関係が悪くなりそう。
若手が辞めそう。

そう考えて、言うべきことを言わなくなる。

しかし、言うべきことを言わない現場では、人は育ちません。
基準も下がります。
できる人にだけ負荷が集中します。

必要なのは、注意しない管理職を増やすことではありません。

信頼関係を土台に、言うべきことを適切に伝えられる管理職を育てることです。


これは管理職本人の人柄だけの問題ではない

ここで大事なのは、管理職本人だけを責めて終わらせないことです。

「あの店長は人望がない」
「あの係長は言い方がきつい」
「あの主任は部下の話を聴けない」
「あのSVは上から目線だ」

そう見える場面は確かにあります。

ただ、それを本人の人柄や性格だけで片づけると、会社は同じ問題を繰り返します。

多くの会社では、現場リーダーに役職は与えています。

しかし、人を動かす関わり方までは教えていません。

プレイヤーとして成果を出してきた人を、店長にする。
経験の長い人を、係長にする。
面倒見がよさそうな人を、主任にする。
現場をよく知っている人を、SVにする。

それ自体は自然な流れです。

ただし、役職を与えただけで、部下を動かせる管理職になるわけではありません。

肩書きと経験だけで部下を動かそうとする。
その結果、部下は指示待ちになり、本音を言わず、自分から動かなくなる。

これは、管理職本人だけの問題ではなく、会社として「人を動かす関わり方」を教えられているかの問題です。


会社として育てるべき管理職像

では、会社としてどのような管理職を育てるべきか。

それは、肩書きと権限だけで部下を動かす管理職ではありません。

信頼関係を土台に、部下を動かせる現場リーダーです。

具体的には、次のような管理職です。

部下を一人の人として見られる管理職。
部下の考えや背景に興味を持てる管理職。
指示だけでなく、意図や目的を伝えられる管理職。
部下の話を聴ける管理職。
必要な場面では、言うべきことを言える管理職。
任せる、見る、伝える、聴く、フィードバックすることを積み重ねられる管理職。

これは、単なるコミュニケーション能力の話ではありません。

現場を動かすための管理職行動です。

上下関係で動く部下は、上司の役職を見ています。
信頼関係で動く部下は、上司という人を見ています。

会社が育てるべきなのは、役職で動かす管理職ではなく、人として信頼され、仕事として部下を動かせる管理職です。


その管理職を育てるために会社が整えるべきこと

ただし、「信頼関係をつくりましょう」と言うだけでは現場は変わりません。

これだけでは、きれいごとで終わります。

大事なのは、信頼関係を管理職個人のセンスに任せないことです。

会社として、現場リーダーがどう部下と関わるのかを、行動レベルに落とす必要があります。

たとえば、

部下にどのように声をかけるのか。
1on1や面談で何を確認するのか。
指示を出すとき、目的や背景をどう伝えるのか。
部下の話をどう聴くのか。
注意やフィードバックをどのような手順で行うのか。
任せた仕事をどう確認するのか。
困っている部下をどう支援するのか。

こうした行動が曖昧なままだと、管理職ごとに関わり方がバラバラになります。

ある管理職は、部下の話をよく聴く。
別の管理職は、指示だけで動かそうとする。
ある管理職は、注意の仕方がうまい。
別の管理職は、言うべきことを言えない。

これでは、部下育成が上司任せになります。

現場リーダー育成を本人任せにしている会社では、できる管理職の下では部下が育ちます。
しかし、そうでない管理職の下では、部下は育ちません。

会社として必要なのは、信頼関係を土台に人を動かす関わり方を、現場リーダーが学び、実践し、振り返れる仕組みです。

研修を一度やって終わりではなく、現場で使う。
管理職同士でケースを共有する。
部下への関わり方を振り返る。
うまくいったこと、うまくいかなかったことを会社の知見にする。

ここまでできて、初めて現場リーダー育成は仕組みになります。


おわりに

肩書きと権限で部下を動かすことはできます。

しかし、それだけでは部下は本当の意味では動きません。

上下関係で動く部下は、あなたの役職を見ています。
信頼関係で動く部下は、あなたの人を見ています。

この違いは、現場の自走力にそのまま表れます。

部下が指示待ちになる。
本音が上がってこない。
注意やフィードバックが効かない。
管理職がいないと現場が動かない。

こうした問題が起きているなら、管理職本人の性格や人柄だけで片づけてはいけません。

会社として、現場リーダーに役職は与えても、人を動かす関わり方までは教えられていない可能性があります。

特に、上下関係で動く会社ほど、この問題は表に出にくいものです。

部下は表面上は動いているからです。
でも、自分で考えない。
本音を言わない。
上司がいないと動かない。

それは、本当に部下が動いている状態とは言えません。

会社として必要なのは、肩書きで動かす管理職ではなく、信頼関係を土台に部下を動かせる現場リーダーを育てることです。

そのためには、管理職本人の努力だけでは足りません。

会社として、現場リーダーが部下を見る、任せる、伝える、聴く、フィードバックするための仕組みを持つ必要があります。


現場リーダー育成に課題を感じている企業様へ

店長・SV・係長・主任が、肩書きや経験だけで部下を動かそうとしている。
1on1や面談をしているのに、本音が上がってこない。
部下が指示待ちになり、現場の自走力が育たない。
注意やフィードバックがうまく機能していない。

このような課題を感じている企業様は、一度、現状を整理することをおすすめします。

現場リーダー育成の課題は、表面的には「本人の人柄」や「コミュニケーション能力」の問題に見えます。

しかし実際には、会社としてどのような管理職を育てるのか、現場でどのような関わり方を求めるのか、その基準や仕組みが曖昧なことに原因がある場合も少なくありません。

現場リーダー育成・管理職育成に課題を感じている企業様は、以下のフォームよりご相談ください。

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貴社の状況を伺ったうえで、現場リーダー育成のどこに詰まりがあるのか、どこから整えるべきかを整理します。

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