はじめに
部下から慕われる管理職がいます。
現場の話をよく聞く。
部下の気持ちを分かってくれる。
困っているときに寄り添ってくれる。
上司や会社に対しても、現場の声を言ってくれる。
部下からすれば、とても頼もしい存在です。
「この人は分かってくれている」
「自分たちの味方でいてくれる」
「上に対しても言ってくれる」
そう感じるでしょう。
管理職として、部下から信頼されることは大切です。
現場の声を聞かず、会社の方針を一方的に押しつけるだけでは、部下はついてきません。
ただし、ここで一つ注意が必要です。
部下の味方でいようとするあまり、会社や上司を“敵”にしていないでしょうか。
「俺も反対なんだけどさ」
「上が決めたことだから」
「上は現場のことを分かっていないよな」
このように伝えてしまうと、部下からは好かれるかもしれません。
でも、その関わり方は、組織を前に進めるマネジメントとは少し違います。
問題は、部下に寄り添うことではありません。
部下に寄り添うために、会社と現場の間に見えない線を引いてしまうことです。
部下の不満に乗ると、一時的には信頼される
現場には不満があります。
人が足りない。
仕事が増える。
本部や上司の決定が現場感覚と合わない。
急な方針変更に振り回される。
現場の事情を分かってもらえない。
管理職自身も、そう感じることがあるでしょう。
だから、部下から不満を言われたときに、
「分かるよ」
「現場は大変だよな」
「上は本当に分かっていないよな」
と言いたくなる気持ちは分かります。
その場では、部下との距離は縮まります。
部下も安心します。
「この上司は、自分たちの側に立ってくれている」
そう感じるからです。
特に、現場で苦しんでいる部下にとって、自分たちの気持ちを分かってくれる管理職は心強い存在です。
ただ、その信頼は少し危ういものでもあります。
なぜなら、会社や上司への不満を共有することでつくられた、会社や上司を「敵」と見立てた結束だからです。
「部下の味方」が、会社への不信を強めることがある
部下の不満に寄り添うことは大切です。
ただし、その不満に乗り続けると、現場にはこういう空気が生まれます。
会社は現場を分かっていない。
上司は現場を見ていない。
自分たちはいつも振り回されている。
この管理職だけが分かってくれている。
一見すると、チームはまとまっているように見えます。
「あの人についていこう」
「あの人は自分たちの味方だ」
そういう結束も生まれます。
しかし、その結束の中心にあるのが、会社や上司への不信感だとしたらどうでしょうか。
会社の方針が出ても、現場は受け入れにくくなります。
新しい取り組みが始まっても、
「また上が勝手に決めた」
「どうせ現場のことは分かっていない」
という受け止め方になります。
管理職本人は部下を守っているつもりでも、結果として、現場が会社の方針を受け取れなくなる。
変化に向かう力が弱くなる。
組織全体が前に進みにくくなる。
これが、敵をつくるマネジメントの怖さです。
管理職の役割は、現場の代弁者だけではない
管理職は、部下の声を聞く必要があります。
現場で何が起きているのか。
何に困っているのか。
どこに無理があるのか。
これを把握せずに、チームは動かせません。
ただし、管理職の役割は、現場の不満をそのまま代弁することだけではありません。
「現場は無理だと言っています」
「みんな反対しています」
「現場では納得していません」
これだけでは、会社と現場の距離は縮まりません。
一方で、会社の方針をそのまま下ろすだけでも不十分です。
「会社が決めたのでやってください」
「上からの指示です」
「決まったことなので従ってください」
これでは、現場は動きません。
管理職に求められるのは、会社と現場をつなぐことです。
会社の方針を、現場で動ける言葉に変える。
現場の声を、会社が判断できる形にして返す。
この橋渡しができて、初めて現場リーダーとして機能します。
部下に好かれることと、組織を前に進めることは同じではない
部下に嫌われたい管理職はいません。
できれば信頼されたい。
相談されたい。
「この人が上司でよかった」と思ってもらいたい。
そう思うのは自然です。
しかし、部下に好かれることと、組織を前に進めることは同じではありません。
部下の気持ちに寄り添うことは大切です。
でも、必要な方針まで否定してしまえば、現場は変化できません。
部下の不満を受け止めることは大切です。
でも、その不満を会社への攻撃に変えてしまえば、現場は被害者意識を持ちやすくなります。
管理職に必要なのは、部下の気持ちを無視することではありません。
部下の気持ちを受け止めたうえで、会社として必要なことをどう伝えるか。
会社の方針を理解したうえで、現場で実行できる形にどう変えるか。
そこに、管理職としての難しさがあります。
これは管理職本人の人柄だけの問題ではない
会社や上司を敵にする管理職を見ると、会社は本人の問題として見がちです。
「会社への理解が足りない」
「現場に寄りすぎている」
「管理職としての自覚が弱い」
もちろん、本人が向き合うべき部分はあります。
ただ、それだけで終わらせると、同じことが繰り返されます。
そもそも会社は、管理職に何を求めているでしょうか。
会社の方針を、どう現場へ伝えてほしいのか。
現場の不満を、どう受け止めてほしいのか。
どこまで判断を任せるのか。
部下に好かれることと、組織を前に進めることの違いを伝えているのか。
ここが曖昧なままでは、管理職は自分なりのやり方で現場をまとめようとします。
そして、部下に好かれる関わり方へ寄っていく。
現場の不満に乗った方が、短期的にはまとまりやすいからです。
これは、管理職本人の性格だけの問題ではありません。
会社として、現場リーダーに求める役割が明確になっていないことも大きな要因です。
管理職育成で必要なのは、会社と現場をつなぐ力
現場リーダーに必要なのは、会社の方針をただ伝える力だけではありません。
部下の不満を受け止める力だけでもありません。
会社の意図と現場の現実をつなぐ力です。
なぜ、この方針が必要なのか。
現場では、何が不安なのか。
どこに負担が出るのか。
何を守り、何を調整するのか。
部下にどう伝えれば、前向きに動き出せるのか。
このような視点を持てる現場リーダーを育てる必要があります。
ただし、これは本人の経験やセンスだけに任せるものではありません。
会社として、方針の背景を伝える。
現場リーダーが自分の言葉で伝えられるようにする。
現場の声を、単なる不満ではなく、改善や判断につながる情報として扱えるようにする。
そこまで含めて、管理職育成です。
おわりに
部下から慕われる管理職は、悪い存在ではありません。
現場の声を聞く。
部下に寄り添う。
困っている人を支える。
これは、管理職にとって大切な姿勢です。
ただし、その関わり方が、会社や上司を敵にする形になっているなら注意が必要です。
「上は分かっていない」
「会社が勝手に決めた」
「自分も本当は反対なんだけど」
こうした言葉は、部下からの信頼を得るかもしれません。
しかし同時に、現場と会社の間に見えない線を引いてしまいます。
管理職の役割は、部下の味方を演じることではありません。
会社の言葉をただ押しつけることでもありません。
会社と現場をつなぎ、チームを前に進めることです。
部下に好かれる管理職から、組織をつなぐ現場リーダーへ。
その役割転換を本人任せにしないことが、会社としての管理職育成です。
現場リーダー育成に課題を感じている企業様へ
管理職が、現場の不満に乗ってしまう。
会社の方針が、現場に前向きに伝わらない。
店長・SV・係長・主任によって、方針の伝え方に差がある。
部下には慕われているが、組織全体を前に進める力が弱い。
このような課題を感じている企業様は、一度、現状を見直すことをおすすめします。
表面的には、管理職本人のコミュニケーションや会社理解の問題に見えるかもしれません。
しかし実際には、会社として現場リーダーに何を期待するのか、方針をどう現場へつなぐのか、現場の声をどう扱うのかが曖昧な場合も少なくありません。
現場リーダー育成・管理職育成に課題を感じている企業様は、以下のフォームよりご相談ください。
貴社の状況を伺ったうえで、現場リーダー育成におけるボトルネックを見極め、優先して見直すべき課題を明確にします。
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