はじめに
管理職になったからといって、急に何でもできるようになるわけではありません。
人前で話すのが得意ではない。
細かい数字を見るのが苦手。
部下への指示がうまく言葉にならない。
強く言うべき場面で、つい遠慮してしまう。
余裕がないときに、言い方がきつくなる。
そんな自分に気づいて、落ち込むことはないでしょうか。
「管理職なのに、こんなことで悩んでいていいのか」
「もっと堂々としていないといけないのではないか」
「部下の前では、弱さを見せてはいけないのではないか」
「自分よりできる部下を見ると、正直少し焦る」
こうした感情は、なかなか人には言いにくいものです。
でも、実際には多くの管理職が感じています。
管理職だからといって、完璧な人になる必要はありません。
むしろ、完璧であろうとするほど、自分を追い込みます。
そして、その無理はチームにも伝わります。
管理職は「全部できる人」ではない
管理職になると、どこかでこう思い込みやすくなります。
自分が一番分かっていなければいけない。
自分が一番できなければいけない。
自分が迷ってはいけない。
自分が弱みを見せてはいけない。
でも、これはかなり苦しい前提です。
管理職の仕事は、全部を一人でできることではありません。
チームとして成果を出すこと。
部下が力を出せる状態をつくること。
一人では届かないところに、チームで近づくこと。
ここが本来の役割です。
それなのに、管理職になると、自分一人で背負いすぎてしまう人がいます。
部下に頼るのは情けない。
自分が分からないと言うのは恥ずかしい。
できないことを見せたら、信頼を失う。
そう考えて、苦手なことまで抱え込んでしまう。
でも、全部できるリーダーなど、現実にはほとんどいません。
誰にでも、苦手なことはあります。
弱い部分もあります。
迷うこともあります。
誰かに頼らないと進まない場面もあります。
管理職だから、それがなくなるわけではありません。
弱みを隠すほど、チームは動きにくくなる
自分の弱みを見せたくない。
その気持ちはよく分かります。
部下に頼りなく見られたくない。
上司としての威厳を保ちたい。
ちゃんとできる人だと思われたい。
そう思うのは自然です。
ただ、弱みを隠そうとしすぎると、チームは動きにくくなります。
分からないのに分かっているふりをする。
苦手なのに一人で抱える。
助けてほしいのに頼まない。
余裕がないのに平気な顔をする。
すると、周りは気づきます。
「あれ、本当は困っているのではないか」
「でも、こちらからは言いにくい」
「何を手伝えばいいか分からない」
「上司が全部抱えているから、動きにくい」
結果として、チームの力が使われません。
本当は助けてほしい。
でも言えない。
本当は任せたい。
でも頼れない。
本当は苦手なことがある。
でも隠してしまう。
その状態が続くと、管理職は孤独になります。
そして、チームも育ちにくくなります。
弱みは、誰かの強みで補えばいい
チームには、いろいろな人がいます。
細かい確認が得意な人。
人の変化に気づく人。
数字を見るのが得意な人。
場を明るくする人。
資料づくりが得意な人。
お客様対応に強い人。
黙々とやり切る人。
周囲を巻き込むのがうまい人。
それぞれに得意があります。
そして当然、管理職にも得意と苦手があります。
自分が苦手なことを、誰かが得意にしている。
それは、チームにとって大きな力です。
たとえば、自分は細かい資料確認が苦手。
でも、部下の中に細部を見るのが得意な人がいる。
それなら、その人の力を借りればいい。
自分は新しいツールが苦手。
でも、若手の部下が詳しい。
それなら、教えてもらえばいい。
自分は場を和ませるのが苦手。
でも、自然に周囲を明るくできる部下がいる。
それなら、その人の強みが活きる場面をつくればいい。
管理職が一人で完結しなくていいのです。
むしろ、誰かの強みを活かせることこそ、チームの強さです。
苦手を認めることは、負けではない
管理職の中には、苦手を認めることを負けのように感じる人がいます。
「それは苦手です」と言うと、評価が下がる気がする。
「教えてほしい」と言うと、頼りなく見える気がする。
「あなたの方が得意だからお願いしたい」と言うと、自分の価値が下がる気がする。
でも、実際は逆です。
苦手を認められない上司の方が、チームから見るとしんどいことがあります。
何でも自分でやろうとする。
部下の強みを使わない。
できていないのに任せない。
苦手を隠して、結果的に仕事が遅れる。
この方が、チームにとっては困ります。
一方で、自分の苦手を分かっている上司は、仕事を組み立てやすい。
「ここは自分よりあなたの方が得意だからお願いしたい」
「私はここが弱いので、確認を一緒にしてほしい」
「この部分は任せたい。その代わり、全体の方向性はこちらで見る」
こう言える上司は、弱い上司ではありません。
自分の限界を分かったうえで、チームの力を使える上司です。
頼ることは、責任を手放すことではない
ここで大事なのは、頼ることと丸投げを混同しないことです。
苦手だから全部任せる。
自分は分からないから、あとはよろしく。
得意な人に任せたから、自分は見ない。
これは、頼るではなく丸投げです。
管理職として必要なのは、責任を持ったうえで頼ることです。
目的は何か。
どこまで任せるのか。
どこで確認するのか。
最終的に何を求めているのか。
ここを伝えたうえで任せる。
そうすれば、部下も安心して力を出せます。
自分の得意が活かされている。
でも、放り出されているわけではない。
上司も責任を持って見てくれている。
この状態がつくれると、チームは動きやすくなります。
管理職が苦手を認めることは、責任を手放すことではありません。
チームで成果を出すために、役割を組み直すことです。
自分の弱みを責め続けても、チームは強くならない
自分には向いていないのではないか。
もっとできる管理職にならなければいけない。
部下の前では、弱さを見せてはいけない。
全部自分でできるようにならなければいけない。
そう考えるほど、管理職は苦しくなります。
でも、自分の弱みを責め続けても、チームは強くなりません。
必要なのは、弱みを消すことではなく、扱い方を変えることです。
自分が苦手なことを知る。
誰が得意なのかを見る。
その人の力が活きる場面をつくる。
任せたあとも放置せず、必要な確認をする。
うまくいったら、その強みを言葉にする。
この積み重ねが、チームを強くします。
管理職が一人で完璧になろうとするより、よほど現実的です。
完璧なリーダーはいらない
チームに必要なのは、完璧なリーダーではありません。
弱みや苦手を互いに理解し、強みや得意を活かせる関係です。
完璧な人が一人いることより、互いに補い合えるチームの方が強い。
管理職が完璧であろうとすると、チームは上司を見るようになります。
上司が判断してくれる。
上司が何とかしてくれる。
上司が全部分かっている。
この状態では、部下は受け身になりやすい。
一方で、管理職が「自分だけでは全部できない」と認めたうえで、部下の力を借りると、チームの見え方が変わります。
「自分にも役割がある」
「自分の得意が必要とされている」
「自分の強みを出していい」
こう感じられるようになります。
管理職の弱みは、隠すものではありません。
チームの強みを引き出す入口になることもあります。
おわりに
管理職だからといって、完璧である必要はありません。
弱みがある。
苦手なことがある。
できないことがある。
誰かに頼る場面がある。
それでいいのです。
大事なのは、それを隠して一人で抱え込むことではありません。
自分の弱みを理解する。
部下の強みを見る。
誰の得意で補えるかを考える。
責任を持ったうえで任せる。
そして、チームとして成果につなげる。
それが管理職の仕事です。
完璧であることより、互いの弱みや苦手を理解し、強みや得意が活きるチームをつくること。
そこに、チームの強さがあります。
あなたの弱みや苦手は、誰かの強みや得意でもあります。
一人で完結しなくていい。
全部できなきゃいけない。
弱みを見せちゃいけない。
人より上でいなきゃいけない。
そう思っているのなら、それは少し苦しくないでしょうか。
リーダーの仕事は、全部できることではありません。
チームでできる状態をつくることです。
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