問題のある部下との向き合い方。指導の前に、まず味方であれ。

コミュニケーション

はじめに

問題のある部下と、どう向き合えばいいのか。

言っても変わらない。
何度伝えても同じことを繰り返す。
周りへの影響もある。
正直、関わるだけで疲れる。

そんな部下がいると、上司としてかなりしんどいと思います。

厳しく言うべきなのか。
距離を置いた方がいいのか。
どこまで関わるべきなのか。
もう本人の問題として割り切るしかないのか。

そう考えたくなる場面もあるでしょう。

きれいごとだけでは済まない。
現場を見ている管理職ほど、そう感じるはずです。

ただ、ここで一度立ち止まって考えたいことがあります。

その部下は、本当に「問題のある部下」なのでしょうか。

もちろん、本人に課題がある場合もあります。
言動に問題があることもあります。
周囲への影響を放っておけない場面もあります。

でも、最初から「問題のある部下」と決めてしまうと、見えなくなるものがあります。

その部下が、なぜそうなったのか。
これまで、どんな関わられ方をしてきたのか。
何を諦めてきたのか。
何を言えずにきたのか。

ここを見ないまま指導しても、関係は変わりにくいです。

問題のある部下がいると、上司は防御的になる

問題行動が続く部下がいると、上司はどうしても身構えます。

また同じことを言わなければいけない。
また注意しなければいけない。
また周りにフォローしなければいけない。

そうなると、部下を見る目も少しずつ変わっていきます。

「どうせまた変わらない」
「この人には何を言っても無駄だ」
「周りに迷惑をかける人だ」
「本人に自覚がない」

そう思いたくなるのも無理はありません。

上司も人間です。
何度も同じことが続けば、期待するのが難しくなります。

そして、期待できなくなると、関わり方も変わります。

声をかける回数が減る。
確認が指摘中心になる。
できていないところばかりを見る。
本人の話を聞く前に、こちらの判断が先に立つ。

すると、部下もそれを感じ取ります。

「どうせ自分は問題扱いされている」
「何を言っても聞いてもらえない」
「もう期待されていない」
「結局、怒られるだけだ」

こうなると、関係はさらに悪くなります。

上司は「問題があるから厳しく見ている」と思っている。
部下は「どうせ問題扱いされている」と感じている。

このズレが続くと、指導は届きにくくなります。

本人だけの問題とは限らない

問題のある部下を見るとき、まず本人に原因を求めたくなります。

やる気がない。
責任感がない。
素直さがない。
周りへの配慮がない。
自分で考えようとしない。

たしかに、そう見える場面はあるかもしれません。

ただ、それを本人だけの問題として片づけるのは危険です。

なぜなら、今のその部下の状態は、これまでの上司や組織との関わりの結果でもあるからです。

これまで誰からも期待されてこなかった。
できない人として扱われ続けてきた。
意見を言っても否定されてきた。
失敗したときだけ強く責められてきた。
相談しても、ちゃんと受け止めてもらえなかった。

そうした積み重ねがあると、人は少しずつ防御的になります。

素直に聞けなくなる。
先に反発する。
自分を守るために言い訳する。
本音を出さなくなる。
どうせ無理だと諦める。

そして、その姿だけを見た上司から、また「問題のある部下」と判断される。

これが繰り返されると、本人も抜け出しにくくなります。

もちろん、すべてを組織や過去の上司のせいにすればいいという話ではありません。

本人にも向き合うべき課題はあります。
改善すべき行動もあります。
周囲に影響を出しているなら、そこは曖昧にしてはいけません。

ただ、本人だけを責めても変わらないことがあります。

だからこそ、今の上司であるあなたが、最初の見方を変える必要があります。

「問題児」と見られ続けた部下は、抵抗でしか自分を守れないことがある

問題のある部下と見られている人の中には、最初から問題を起こしたかったわけではない人もいます。

本当は分かってほしかった。
本当は認めてほしかった。
本当は相談したかった。
本当は期待されたかった。

でも、どこかで諦めた。

どうせ言っても無駄。
どうせ自分は信用されていない。
どうせ怒られる。
どうせ分かってもらえない。

そう感じるようになると、人は素直に助けを求められなくなります。

そして、抵抗することでしか自分を守れなくなることがあります。

反発する。
黙る。
言い訳する。
斜に構える。
周りと距離を取る。

上司から見ると、扱いにくい部下に見えます。

でも、その奥には、諦めや不信感があるかもしれません。

もちろん、だから問題行動を許していいわけではありません。

ここははっきり分ける必要があります。

味方になることと、甘やかすことは違います。
理解しようとすることと、何でも許すことは違います。
背景を見ることと、責任を曖昧にすることは違います。

大事なのは、問題行動だけを見て切り捨てないことです。

味方であることは、甘やかしではない

問題のある部下に対して、まず味方になる。

こう言うと、甘い対応のように聞こえるかもしれません。

でも、そうではありません。

味方になるとは、何でも許すことではありません。
注意しないことでもありません。
厳しいことを言わないことでもありません。

味方になるとは、見捨てないことです。

この人は変われないと決めつけない。
問題行動だけで人格を判断しない。
過去の評判だけで向き合わない。
最初から諦めた目で見ない。

そのうえで、必要なことは伝える。

ここが大事です。

部下の味方である上司は、耳あたりのいいことだけを言う人ではありません。

むしろ、本当に味方なら、言うべきことを言います。

ただし、相手を切り捨てるために言うのではありません。
相手を変える可能性に向き合うために言うのです。

「その行動は周囲に影響が出ています」
「ここは改善が必要です」
「ただ、私はあなたを見捨てたいわけではありません」
「どうすれば変えられるか、一緒に考えたいです」

この姿勢があるかどうかで、指導の届き方は変わります。

指導の前に、先入観を外す

問題のある部下に向き合うとき、まず必要なのは指導の技術ではありません。

先入観を外すことです。

周囲から聞いている評判。
過去のトラブル。
前任者からの引き継ぎ。
自分がこれまで見てきた言動。

それらは大事な情報です。

ただし、それだけで相手を決めつけてはいけません。

「この人はこういう人だ」
「どうせ変わらない」
「また同じことをする」
「言っても無駄だ」

この前提で関わると、部下にも伝わります。

上司が諦めた目で見ている。
上司が最初から疑っている。
上司が自分を問題扱いしている。

そう感じた部下が、素直に話すことは難しいです。

だから、まずは一度、まっすぐ見る必要があります。

過去は過去として見る。
問題行動は問題行動として扱う。
そのうえで、今この人とどう向き合うかを考える。

ここを分けることが大切です。

まず聞くべきことがある

問題のある部下に対して、すぐに指摘や注意から入ると、相手は身構えます。

もちろん、緊急性の高い問題や、周囲への大きな影響がある場合は、すぐに止める必要があります。

ただ、多くの場合、最初から正論をぶつけても相手は変わりません。

まず聞くべきことがあります。

「今、何に困っていますか」
「この仕事のどこがやりにくいですか」
「自分では、何が課題だと思っていますか」
「周りからどう見られていると感じていますか」
「これまで、どんな関わられ方がしんどかったですか」

こうした問いを通じて、相手の見えている世界を確認する。

それだけで、相手の反応が変わることがあります。

部下は、正論を知らないから変わらないのではない場合があります。

分かっている。
でも、どう変えればいいか分からない。
変わろうとしても、また否定される気がする。
そもそも期待されていないと思っている。

そういうこともあります。

だから、指導の前に、まず聞く。

聞くことは、甘やかしではありません。
相手を正確に見るための確認です。

変えるのは、部下だけではない

問題のある部下と向き合うとき、上司はどうしても「部下をどう変えるか」を考えます。

もちろん、部下の行動変容は必要です。

遅刻があるなら改善が必要です。
報連相が不足しているなら見直す必要があります。
周囲に強い言い方をしているなら、変える必要があります。
任された仕事を放置しているなら、責任を持つ必要があります。

ただ、部下だけを変えようとしても限界があります。

上司の関わり方も変える必要があります。

何を期待しているのか明確に伝える。
できていないことだけでなく、できていることも見る。
注意するときは人格ではなく行動を扱う。
一度伝えて終わりにせず、経過を見る。
改善が見えたら、小さくても言葉にする。

これをしないまま、部下だけに変化を求めても、関係は動きません。

部下の態度を変えたいなら、まず上司の見方と関わり方を変える。

そこから始める方が現実的です。

管理職が取るべき3つの関わり方

問題のある部下に向き合うとき、現場で意識したいことは3つです。

1. 過去の評判だけで見ない

前任者からの情報や、周囲の評判は無視できません。

ただし、それをそのまま相手のすべてにしてはいけません。

「以前こうだった」
「周りがこう言っている」
「過去にこんなことがあった」

それは事実かもしれません。

でも、今のあなたがその部下とどう向き合うかは、別の問題です。

まずは、自分の目で見る。
自分の耳で聞く。
自分の言葉で関わる。

ここから始める必要があります。

2. 問題行動と人格を分ける

問題のある部下に対して、一番やってはいけないのは、人格で決めつけることです。

「だらしない」
「責任感がない」
「やる気がない」
「協調性がない」

こう言いたくなる場面はあるでしょう。

でも、それをそのまま伝えると、相手は防御します。

扱うべきなのは人格ではなく行動です。

「期限を過ぎても報告がなかった」
「周囲への伝え方が強く、相手が萎縮していた」
「依頼された仕事の進捗が共有されていなかった」
「会議で決まった内容と違う進め方になっていた」

このように、事実として扱う。

そのうえで、何を変えてほしいのかを明確に伝える。

問題行動は曖昧にしない。
でも、人格を決めつけない。

この線引きが必要です。

3. 小さな変化を見逃さない

問題のある部下に対して、上司は悪いところばかり見やすくなります。

それは自然です。

実際に問題が起きているからです。
周りにも影響が出ているからです。
上司として放っておけないからです。

ただ、悪いところだけを見続けると、部下は変わる理由を失います。

少し早めに報告してきた。
言い方を少し変えようとしていた。
以前より相談が早くなった。
一度注意したことを意識していた。
周囲への確認を入れるようになった。

こうした小さな変化を見逃さないことです。

大げさに褒める必要はありません。

「今の報告は前より早かったですね」
「今回は先に確認してくれたので助かりました」
「そこを意識していたのは分かりました」

このくらいでいいです。

変化を見ていると伝えることが、次の変化につながります。

味方になるからこそ、言うべきことを言う

問題のある部下に味方として向き合う。

それは、優しくするだけの話ではありません。

むしろ、味方だからこそ、言うべきことを言う必要があります。

周囲に迷惑が出ているなら伝える。
改善が必要なら伝える。
本人のためにも、今のままでは困ることを伝える。

ただし、伝え方の前提が大事です。

「あなたは問題だ」と突きつけるのか。
「この行動を変える必要がある。一緒に考えたい」と向き合うのか。

この違いは大きいです。

前者は、相手を追い詰めます。
後者は、相手に変わる余地を残します。

部下は、上司の言葉だけでなく、上司の前提を感じ取ります。

自分を切り捨てようとしているのか。
本当に変わる可能性を見てくれているのか。

そこを見ています。

だからこそ、指導の前に、まず味方であることが必要なのです。

おわりに

問題のある部下と向き合うのは、簡単ではありません。

言っても変わらない。
周りへの影響もある。
こちらも疲れる。
もう距離を置きたくなる。

そう感じることもあるでしょう。

でも、その部下を最初から「問題のある人」と決めてしまうと、見えなくなるものがあります。

なぜそうなったのか。
これまで、どんな関わられ方をしてきたのか。
何を諦めてきたのか。
どこで防御的になっているのか。

そこを見ないまま指導しても、言葉は届きにくいです。

味方になることは、甘やかすことではありません。
問題行動を見逃すことでもありません。

見捨てないこと。
切り捨てないこと。
先入観だけで決めつけないこと。
そのうえで、必要なことはきちんと伝えること。

本当の指導は、その先にあります。

部下を変えようとする前に、まず自分の見方と関わり方を変えてみる。

そこから、関係が動き始めることがあります。


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