部下のその不満、本音とは限らない

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はじめに

部下から、こんな不満を言われたことはないでしょうか。

「現場を何も分かっていない」
「上は現場を見ていない」
「もっと現場に来てほしい」
「こちらの大変さを分かってほしい」

管理職としては、かなりこたえる言葉です。

見ていないつもりはない。
現場を軽く扱っているつもりもない。
むしろ、できる限り気にかけている。
必要な確認もしている。
声もかけている。

それなのに、部下からは「分かっていない」と言われる。

そうなると、上司としては苦しくなります。

「そんなつもりはない」
「見ていないわけではない」
「こっちだって忙しい中で対応している」
「では、どうすれば納得してくれるのか」

そう感じるのも自然です。

ただ、ここで一つ注意したいことがあります。

部下のその不満は、必ずしも本音そのものではないかもしれません。

「現場を見ていない」という言葉の奥には、別の感情が隠れていることがあります。

それは、
自分たちの大変さを分かろうとしてくれていない
という感覚です。

部下の不満は、言葉通りとは限らない

部下が「現場を見ていない」と言うと、上司はこう考えがちです。

では、もっと現場に行けばいいのか。
もっと様子を見ればいいのか。
もっと話を聞けばいいのか。
もっと同行すればいいのか。

もちろん、現場を見ることは大切です。

現場を知らないまま、机上だけで判断するのは危険です。
部下の状況を知らずに指示を出せば、反発されるのも当然です。

ただし、現場に行けばすべて解決するかというと、そうではありません。

なぜなら、部下が求めているのは、単に上司がその場に来ることだけではないからです。

部下が本当に感じているのは、

「自分たちの状況を分かってくれていない」
「困っていることに気づいてくれていない」
「こちらの大変さを軽く見ている」
「結果だけ見て判断されている」
「自分たちに興味を持ってくれていない」

という感覚かもしれません。

その感覚が、
「現場を見ていない」
という言葉になって出ているだけのことがあります。

つまり、部下の不満は、いつも本音のまま出てくるわけではありません。

本音は、もっと奥にある場合があります。

「現場を見てほしい」の奥にあるもの

部下が「現場を見てほしい」と言うとき、実際にはこう言いたいのかもしれません。

自分たちがどれだけ大変かを分かってほしい。
この仕事がどれだけ負荷があるかを知ってほしい。
簡単に見える仕事にも、裏側があることを分かってほしい。
結果だけでなく、そこに至るまでの苦労も見てほしい。
自分たちが雑に扱われていないと感じたい。

ここまで言葉にしてくれる部下は、あまり多くありません。

多くの場合、部下はそこまで整理して話してくれません。

だから、分かりやすい言葉に変換されます。

「現場を見ていない」
「上は何も分かっていない」
「もっと見に来てください」

でも、その言葉だけを受け取ると、上司は対応を間違えます。

現場に行く回数を増やす。
声をかける回数を増やす。
会議で状況を聞く時間を増やす。

それ自体は悪くありません。

ただ、それだけでは部下の不満が消えないことがあります。

なぜなら、問題は「行ったかどうか」ではなく、
部下が“自分たちを見てくれている”と感じられているかどうか
だからです。

見ているつもりでも、部下には伝わっていないことがある

管理職からすると、部下を見ているつもりかもしれません。

日報を見ている。
数字を確認している。
報告も受けている。
会議でも話を聞いている。
必要なときには声をかけている。

それは確かに「見ている」行為です。

ただ、部下が求めているのは、管理されている感覚だけではありません。

自分の状況を分かろうとしてくれている。
大変なところに気づいてくれている。
困っていることを拾おうとしてくれている。
結果だけではなく、過程にも目を向けてくれている。

この実感です。

上司は見ているつもり。
でも、部下には見てもらえている実感がない。

このズレがあると、部下の不満は残ります。

上司からすれば、
「見ているのに、なぜ不満が出るのか」
となる。

部下からすれば、
「見ていると言うけれど、分かってくれていない」
となる。

ここにすれ違いが生まれます。

部下が求めているのは、物理的な距離だけではない

もちろん、現場に足を運ぶことは大切です。

顔を見せる。
様子を見る。
空気を感じる。
実際の動きを確認する。

これらは、管理職にとって必要なことです。

ただし、部下が求めているのは、物理的な距離だけではありません。

どれだけ現場に行っても、ただ通り過ぎるだけなら意味は薄いです。
どれだけ声をかけても、形式的な確認だけなら届きません。
どれだけ話を聞いても、結局こちらの大変さに関心がないと感じれば、不満は残ります。

逆に、毎日現場に行けなくても、部下がこう感じられていれば関係は変わります。

「この人は、自分たちの状況を分かろうとしている」
「困っていることを拾おうとしてくれている」
「結果だけで判断していない」
「現場の負担を軽く見ていない」
「自分たちに関心を持ってくれている」

ここが大事です。

必要なのは、現場に行く回数だけではありません。

部下視点で、
自分たちに興味を持ってくれている
と感じられる関わりです。

不満の言葉に反応しすぎると、本質を見失う

部下から不満を言われると、上司はどうしても反応したくなります。

「現場を見ていない」と言われれば、
「いや、見ている」と言いたくなる。

「分かっていない」と言われれば、
「そんなことはない」と返したくなる。

「もっと来てほしい」と言われれば、
「そんな時間はない」と思いたくなる。

その気持ちは分かります。

ただ、ここで言葉に反応しすぎると、本質を見失います。

大事なのは、部下の言葉をそのまま否定することではありません。

その言葉の奥に、どんな感情があるのかを見ることです。

怒っているのか。
諦めているのか。
分かってほしいのか。
助けてほしいのか。
自分たちの仕事を軽く見られていると感じているのか。

そこを見ないまま、表面の言葉だけでやり取りすると、関係はこじれます。

部下は、正確な言葉で不満を出してくれるとは限りません。

むしろ、うまく言えないからこそ、
「現場を見ていない」
という言葉になって出てくることがあります。

だからこそ、上司は一度立ち止まる必要があります。

まず必要なのは、反論ではなく確認

部下から不満が出たとき、最初に必要なのは反論ではありません。

確認です。

「そう感じているんですね」
「どの場面でそう感じましたか」
「何が一番負担になっていますか」
「こちらが見落としていることはありますか」
「現場として、今一番困っていることは何ですか」

こうして、言葉の奥にあるものを確認する。

これは、部下の言い分をすべて受け入れるという意味ではありません。

部下の不満がすべて正しいとは限りません。
現場の見方が偏っていることもあります。
上司として譲れない判断もあります。

ただ、それでも最初から反論すると、部下はさらに本音を出さなくなります。

「やっぱり聞いてもらえない」
「どうせ分かってもらえない」
「言っても無駄だ」

こうなると、関係は深まりません。

まずは確認する。
そのうえで、必要なことは伝える。

この順番が大切です。

「見ている」を伝えるには、具体的に返す

部下に「見てくれている」と感じてもらうには、ただ現場に行くだけでは足りません。

見ていることを、具体的に返す必要があります。

たとえば、

「最近どう?」

だけでは、少し弱い。

それよりも、

「先週から問い合わせが増えているように見えます。負担はどうですか」
「この前の対応、かなり難しかったと思います。何が一番大変でしたか」
「人が少ない中で回してくれているのは見えています。今、どこが一番きついですか」
「結果だけ見ると進んでいますが、途中で負荷がかかっていないか確認したいです」

こう言われると、部下の受け取り方は変わります。

この人は、表面だけを見ているわけではない。
自分たちの状況を分かろうとしている。
結果だけで判断していない。

そう感じやすくなります。

見ているつもりではなく、
見ていることが伝わる言葉にする。

ここが大事です。

部下の不満を消そうとしない

部下の不満が出ると、上司はそれを早く消したくなります。

不満をなくしたい。
納得させたい。
前向きにさせたい。
余計な反発を減らしたい。

その気持ちは自然です。

ただ、不満をすぐに消そうとすると、部下はこう感じることがあります。

「早く終わらせようとしている」
「面倒な話を片づけたいだけではないか」
「結局、こちらの話を聞く気はない」

不満は、ただのわがままとは限りません。

現場からの重要なサインであることもあります。

もちろん、すべてを受け入れる必要はありません。

でも、最初から消そうとするのではなく、まずは受け止めて確認する。

そのうえで、できることとできないことを分ける。

「そこは対応できます」
「そこはすぐには変えられません」
「ただ、負担が出ていることは分かりました」
「まずはここから見直します」

こう伝えるだけでも、部下の受け取り方は変わります。

部下が求めているのは、すべてを叶えてもらうことではない場合があります。

自分たちの大変さを、ちゃんと扱ってもらうことです。

管理職が見直したい3つの関わり方

部下から不満が出たとき、管理職が見直したいことは3つです。

1. 言葉をそのまま受け取りすぎない

「現場を見ていない」と言われたとき、
すぐに「もっと現場に行けばいい」と考える必要はありません。

大事なのは、その言葉の奥に何があるかです。

分かってほしいのか。
負担に気づいてほしいのか。
結果だけで判断されたくないのか。
自分たちに関心を持ってほしいのか。

言葉の表面だけを見ると、対応を間違えます。

2. 見ていることを具体的に返す

上司が見ているつもりでも、部下に伝わっていなければ意味がありません。

「ちゃんと見ているよ」

だけでは弱いです。

何を見ているのか。
どの変化に気づいているのか。
どこを大変だと思っているのか。
何を確認したいのか。

ここまで具体的に返すことです。

部下は、具体的な言葉から
「見てもらえている」
と感じます。

3. 不満の奥にある感情を確認する

不満の奥には、怒りだけでなく、諦めや不安があることもあります。

「分かってもらえない」
「軽く見られている」
「どうせ変わらない」
「言っても無駄だ」

こうした感情が隠れていることがあります。

だからこそ、最初に必要なのは反論ではなく確認です。

「どこでそう感じたのか」
「何が一番負担なのか」
「こちらが見落としていることは何か」

ここを聞くことで、ようやく本当の課題が見えてきます。

おわりに

部下の不満は、いつも本音そのものとは限りません。

「現場を見ていない」
「上は何も分かっていない」
「もっと現場に来てほしい」

その言葉の奥には、別の感情が隠れていることがあります。

自分たちの大変さを分かってほしい。
結果だけで判断しないでほしい。
困っていることに気づいてほしい。
自分たちに関心を持ってほしい。

そうした感情が、分かりやすい不満の言葉になって出ていることがあります。

だから、上司は言葉だけに反応しすぎない方がいい。

現場に行くことは大切です。
話を聞くことも大切です。
でも、それだけでは足りないことがあります。

部下が本当に求めているのは、
「来てくれること」だけではなく、
「見てくれていると感じられること」
かもしれません。

あなたは、部下を見ているでしょうか。

それとも、部下に
「見てもらえている」
と感じてもらえているでしょうか。

この差は、小さいようで大きいです。

部下の不満をなくそうとする前に、まずその言葉の奥にある感情を見る。

そこから、関係は変わり始めます。


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