答えを出さない。指示しない。判断しない。

部下育成・育て方

はじめに

部下が、なかなか自分で考えて動かない。

何かあるたびに、
「どうすればいいですか?」
「これで合っていますか?」
「次は何をすればいいですか?」
と確認に来る。

もちろん、確認してくれること自体は悪いことではありません。

勝手に進めて大きなミスになるより、早めに聞いてくれる方がいい場面もあります。
経験が浅い部下であれば、最初は丁寧に教える必要もあります。
緊急時や重要な判断が必要な場面では、上司が指示を出し、判断することも必要です。

ただ、いつまでも部下が指示待ちのままだと、管理職としては苦しくなってきます。

毎回、答えを求められる。
細かい判断まで確認される。
自分で考えてほしいのに、なかなか動いてくれない。
結果として、管理職自身の仕事が増えていく。

そして、ついこう思ってしまう。

「なんで、もっと自分で考えられないんだろう」
「何度も教えているのに、なぜ判断できないんだろう」
「少しは自分で動いてほしい」

そう感じる管理職は、少なくありません。

でも、ここで一度考えたいことがあります。

もしかすると、部下が指示待ちになっている原因は、部下本人だけにあるのではないかもしれません。

上司が、毎回答えを出しすぎていないか。
上司が、毎回指示を出しすぎていないか。
上司が、毎回判断を引き受けすぎていないか。

部下を助けているつもりの関わりが、部下が考える機会を奪っていることがあります。


答えを出すことは、悪いことではない

まず誤解してほしくないのは、上司が答えを出すこと自体が悪いわけではないということです。

管理職には、判断すべき場面があります。

お客様に迷惑がかかる。
重大なクレームにつながる。
期限が迫っている。
部下だけでは判断できない。
会社としての方針に関わる。

こうした場面では、上司が答えを出す必要があります。

指示を出さなければならない場面もあります。
判断を引き受けなければならない場面もあります。
部下に任せる前に、まず上司が方向を示すべき場面もあります。

だから、

「答えを出してはいけない」
「指示してはいけない」
「判断してはいけない」

という話ではありません。

問題は、そればかりになっていないか、ということです。

部下が質問するたびに、すぐ答えを出す。
部下が迷うたびに、すぐ指示する。
部下が判断に困るたびに、すべて上司が決める。

これが続くと、部下は安心します。

でも同時に、自分で考える必要がなくなります。

「分からなければ上司が答えてくれる」
「迷ったら指示をもらえばいい」
「判断は上司がしてくれる」

そう学習していきます。

上司としては、良かれと思って助けている。

しかし結果として、部下が考える機会を減らしていることがあります。


「教えているのに育たない」の正体

管理職の中には、

「かなり丁寧に教えているのに、部下が育たない」

と感じている人もいると思います。

手順も教えている。
やり方も見せている。
間違えたら修正している。
質問されたら答えている。
困っていれば助けている。

それでも、部下が自分で考えない。

この状態は、管理職にとってかなりしんどいものです。

「自分の教え方が悪いのか」
「部下にやる気がないのか」
「そもそも向いていないのか」

そう考えてしまうこともあるでしょう。

ただ、部下が育たない理由は、教える量が足りないからとは限りません。

むしろ、教えすぎていることもあります。

上司がすべて答える。
上司がすべて手順を決める。
上司がすべて良し悪しを判断する。

そうなると、部下は知識や作業は覚えるかもしれません。

でも、考え方は育ちません。

なぜその判断をするのか。
どこを見るべきなのか。
何を優先するのか。
どの基準で決めるのか。

そこが身についていないと、部下は状況が少し変わっただけで止まります。

そしてまた、上司に聞きに来ます。

「この場合はどうすればいいですか?」

そのたびに上司が答えを出す。

すると、また部下は自分で考える前に聞くようになる。

この繰り返しが、指示待ちをつくっていきます。


答えではなく、考え方を渡す

部下を育てるうえで大切なのは、答えを渡すことだけではありません。

考え方を渡すことです。

たとえば、部下が、

「この対応、どうしたらいいですか?」

と聞いてきたとします。

もちろん、すぐ答えた方が早いです。

「こうして」
「この順番でやって」
「今回はこう返して」

そう言えば、その場は進みます。

でも、それだけでは部下の中に残るのは、「今回の答え」です。

次に少し違うケースが来たとき、また迷います。

そこで必要なのは、

「今回、何を一番大事に考える場面だと思う?」
「お客様にとって一番困ることは何だろう?」
「会社として守るべき基準はどこだと思う?」
「前回と今回で違う点はどこ?」

と、考える入口を渡すことです。

これは、答えを出さずに放置することではありません。

部下が考えられるように、考え方を渡すということです。

管理職に求められるのは、毎回正解を教えることだけではありません。

部下が次に似た場面に出会ったとき、自分で考え始められるようにすることです。


指示ではなく、着眼点を渡す

指示を出すことも、管理職の大切な仕事です。

ただし、指示だけで動く部下は、指示がないと止まります。

「次は何をすればいいですか?」
「どこまでやればいいですか?」
「何を優先すればいいですか?」

こうした確認が続く場合、部下は仕事の見方をつかめていないのかもしれません。

何を見ればよいのか。
どこに気づけばよいのか。
何を基準に優先順位を考えればよいのか。

その着眼点がない。

だから、指示を待つ。

上司としては、

「言わなくても分かってほしい」

と思うかもしれません。

でも、部下にはまだ見えていないことがあります。

管理職が当たり前に見ているものを、部下は見ていない。

管理職が自然に気づいていることに、部下は気づけていない。

だから必要なのは、単に作業を指示することではありません。

どこを見るのかを教えることです。

「この仕事では、最初にここを確認する」
「優先順位を見るときは、期限と影響範囲を見る」
「お客様対応では、相手が何に困っているかを先に見る」
「チーム全体で考えると、ここが詰まると後ろが止まる」

こうした着眼点があると、部下は少しずつ自分で動けるようになります。

指示を減らすには、放っておくのではなく、見るポイントを渡すことが必要です。


判断ではなく、判断の軸を渡す

部下が判断できないとき、上司が判断するのは簡単です。

「それはやる」
「それはやらない」
「今回はこっち」
「そこまでは対応しなくていい」

管理職が判断すれば、その場は進みます。

ただ、毎回上司が判断していると、部下は判断する経験を積めません。

大切なのは、判断そのものを奪うことではなく、判断の軸を渡すことです。

何を優先して決めるのか。
どこまでなら自分で判断してよいのか。
どのラインを超えたら相談すべきなのか。
会社として譲れない基準は何か。
お客様、チーム、リスク、効率のどれを重く見る場面なのか。

こうした軸がないまま、

「自分で判断して」

と言われても、部下は怖いだけです。

間違えたら怒られるかもしれない。
勝手に判断したと言われるかもしれない。
上司の考えと違ったら評価が下がるかもしれない。

そう感じれば、部下は判断を避けます。

そして、また聞きに来ます。

だから、管理職はただ「自分で考えて」と言うだけでは足りません。

どの基準で考えるのか。
どこまで任せるのか。
迷ったときは何を確認するのか。

その判断の軸を一緒に持たせる必要があります。


部下が指示待ちになるのは、安心したいからでもある

部下が指示待ちになる背景には、怠けているからではなく、安心したいという気持ちがあることもあります。

間違えたくない。
怒られたくない。
評価を下げたくない。
迷惑をかけたくない。
自分の判断に自信がない。

だから、上司に確認する。

そう考えると、指示待ちの部下をただ責めるだけでは解決しません。

むしろ、責められるほど部下はさらに確認します。

「勝手にやって怒られるくらいなら、聞いた方が安全だ」

そう思うからです。

管理職として必要なのは、部下の確認をすべて否定することではありません。

部下が自分で考えても大丈夫だと思える関わりをつくることです。

そのためには、いきなり大きな判断を任せる必要はありません。

小さな判断を任せる。
考えた理由を聞く。
間違っていても、考えたプロセスを見る。
次はどこを見ればよいかを一緒に確認する。

こうした積み重ねが、部下の判断する力を育てます。


管理職自身も、抱え込みすぎていないか

部下が指示待ちだと、管理職の負担は増えます。

部下が考える前に聞いてくる。
部下が判断する前に確認してくる。
上司が毎回答える。
その分、上司の時間がなくなる。

そして管理職は、

「結局、自分でやった方が早い」

と思うようになります。

でも、その状態が続くと、さらに部下は育ちません。

管理職自身も疲弊します。

部下を育てたいのに、育てる時間がない。
任せたいのに、任せると不安。
考えてほしいのに、待てない。
自分の仕事もあるから、つい答えを出してしまう。

これは、管理職としてかなり現実的な悩みです。

だからこそ、まずは自分の関わり方を責めるのではなく、整理してみることが大切です。

どの場面で自分は答えを出しすぎているのか。
どの場面なら、部下に考えさせてもよいのか。
何を任せるのが怖いのか。
どこまでなら見守れるのか。
部下に渡すべきなのは、答えなのか、考え方なのか。

ここが整理できると、部下への関わり方は少し変わります。

部下を変える前に、管理職自身が自分の関わり方を見直す。

それも、部下育成の大切な一歩です。


会社としても、管理職任せにしない

一方で、これを管理職個人の努力だけに任せるのは限界があります。

ある管理職は、部下に考えさせながら育てる。
別の管理職は、毎回細かく指示を出す。
また別の管理職は、任せたいけれどどう関わればよいか分からない。

これでは、部下がどの上司のもとで働くかによって、育ち方が大きく変わってしまいます。

会社としても、考えるべきことがあります。

現場リーダーに、どのような育成を期待するのか。
どこまで部下に任せてよいのか。
判断の基準を、現場に共有できているのか。
1on1や面談が、単なる進捗確認で終わっていないか。
部下に考えさせる関わり方を、管理職が学ぶ機会はあるのか。

ここが整っていないと、部下育成は管理職の経験や性格に任されます。

そして管理職本人も、悩みながら手探りで部下と関わることになります。

部下が指示待ちになる問題は、部下本人だけの問題ではありません。

管理職の関わり方の問題でもあり、会社としての育成の仕組みの問題でもあります。

ただし、最初から大きな制度をつくる必要はありません。

まずは、現場で何が起きているのか。
管理職がどこで答えを出しすぎているのか。
部下がどこで判断できずに止まっているのか。

そこを見えるようにすることから始まります。


おわりに

答えを出さない。
指示しない。
判断しない。

これは、何もしないという意味ではありません。

必要な場面では、上司が答えを出す。
必要な場面では、指示を出す。
必要な場面では、判断する。

それは管理職の大切な役割です。

ただ、そればかりでは部下は育ちません。

答えを出すのではなく、考え方を渡す。
指示を出すのではなく、着眼点を渡す。
判断するのではなく、判断の軸を渡す。

その積み重ねが、部下が自分で考え、動ける力につながります。

部下がいつまでも指示待ちだと感じるなら、部下だけを責める前に、一度考えてみてください。

自分は、答えを出しすぎていないか。
指示で動かしすぎていないか。
判断を引き受けすぎていないか。
部下が考えるための材料を渡せているか。

部下を育てるとは、何でも教えることではありません。

部下が自分で考え、選び、動けるように関わることです。

そして、もし今、管理職として悩んでいるなら、その悩みを一人で抱え込まなくてもいいと思います。

部下が指示待ちで困っている。
自分で考えてほしいのに、いつも答えを求められる。
任せたいけれど、どう任せればよいか分からない。
自分の関わり方が、部下の成長につながっているのか不安になる。

こうした悩みは、管理職として真剣に部下と向き合っているからこそ出てくるものです。

大切なのは、根性論で片づけないこと。

一度、自分の状況を言葉にしてみることです。

部下を指示待ちから抜け出させたいなら、答えを与える前に、考え方を渡す。

そしてその前に、管理職自身も、自分が何に悩み、どこで迷っているのかを整理する。

それが、現場で部下を育てる第一歩になります。


管理職個人のお悩みも、会社の管理職育成もご相談ください

管理職本人として、

「部下が指示待ちで、どう関わればよいか分からない」
「自分で考えてほしいのに、いつも答えを求められる」
「任せたいけれど、どこまで任せてよいか迷っている」
「自分の関わり方や、管理職としての立ち位置を整理したい」

という方は、一人で抱え込まず、現在のお悩みを一度言語化してみることをおすすめします。

管理職としてのお悩みや、仕事・キャリアについて個別に相談したい方は、以下のフォームよりお申し込みください。

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また、企業として、

部下が指示待ちから抜け出せない。
管理職が答えや指示を出しすぎて、部下が育たない。
店長・SV・係長・主任によって、任せ方や育て方に差がある。
現場リーダーが、部下に考えさせる関わり方を身につけられていない。

このような課題を感じている場合は、現場リーダー育成・管理職育成の仕組みを見直すタイミングかもしれません。

法人として、現場リーダー育成・管理職育成に課題を感じている企業様は、以下のフォームよりご相談ください。

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