優秀な部下が脅威に感じる管理職へ

管理職の考え方・マインドセット

はじめに

自分より仕事ができる部下がいる。

判断が早い。
専門知識もある。
周囲からも頼られている。
自分では思いつかなかった提案も出してくる。

本来であれば、頼もしい存在です。

それでも、心のどこかで素直に喜べない。

「自分の立場がなくなるのではないか」
「そのうち追い越されるのではないか」
「周囲から、自分より部下の方が優秀だと思われるのではないか」

そんな気持ちになることがありませんか?

おそらく、口には出しにくいですよね。

管理職なのだから、部下の成長を喜ぶべき。
優秀な部下を育てるのが上司の役割。
嫉妬するなんて器が小さい。

そう言われそうだからです。

ただ、私は、優秀な部下に脅威を感じること自体を、必要以上に責める必要はないと思っています。

特に、これまでプレイヤーとして成果を出し、その実績を評価されて管理職になった人ほど、起こりやすい感情だからです。

問題は、そう感じたことではありません。

その感情によって、部下の成長を止めてしまうことです。


優秀な部下を脅威に感じるのは、同じ土俵で競っているから

プレイヤー時代は、自分の仕事の成果が評価されます。

仕事が早い。
専門知識がある。
売上をつくれる。
お客様対応がうまい。
難しい問題を解決できる。

こうした力が評価されて、管理職になります。

ところが、管理職になったからといって、これまで培ってきた価値観がすぐに切り替わるわけではありません。

管理職になってからも、

「自分が一番詳しくなければならない」
「部下より早く答えを出さなければならない」
「困ったときは、自分が解決しなければならない」

と考えてしまいます。

そこに、自分より仕事ができる部下が現れる。

自分より判断が早い。
自分より詳しい。
周囲からも評価されている。

同じ土俵で見れば、焦るのは自然です。

自分がこれまで価値を証明してきた「仕事ができる」という場所で、部下に追いつかれ、追い越されそうになるからです。

つまり、優秀な部下を脅威に感じる背景には、管理職になっても、まだ部下と同じ土俵で戦っているという問題があります。


脅威を感じると、無意識に部下を抑えてしまう

もちろん、露骨に部下の邪魔をする管理職ばかりではありません。

多くの場合、本人にもはっきりとした自覚はありません。

それでも、日々の関わり方には表れます。

部下の提案に、必要以上に細かく口を出す。
一度任せた仕事を途中で取り上げる。
重要な情報や仕事を渡さない。
部下の成果より、自分の経験や実績を強調する。
周囲から評価されている部下にだけ厳しくなる。

本人は、

「まだ任せるには早い」
「失敗させるわけにはいかない」
「自分が責任を持つ立場だから」

と考えているかもしれません。

それ自体がすべて間違いというわけではありません。

ただ、本当に部下のためなのか。
それとも、自分の立場を守るためなのか。

ここは、管理職自身が一度立ち止まって考える必要があります。

部下を心配しているつもりで、実は部下が力を発揮する機会を奪っていることがあるからです。

そして、優秀な部下ほど、こうした関わりに敏感です。

「ここでは、これ以上力を出さない方がいい」
「提案しても否定される」
「成長しても歓迎されない」

そう感じれば、力を抑えるか、別の環境を探すようになります。

会社にとっても大きな損失です。


管理職と部下では、そもそも役割が違う

ここで改めて考えたいのが、管理職の役割です。

管理職の仕事は、部下より早く仕事をすることではありません。

部下より多くの知識を持つことでも、いつも正しい答えを出すことでもありません。

部下が力を発揮できる環境をつくる。
必要な仕事を任せる。
判断に迷ったときに支援する。
チームの力を組み合わせる。
個人では出せない成果につなげる。

これが管理職の役割です。

プレイヤーは、自分自身の力で成果を出します。

管理職は、部下やチームを通じて成果を出します。

この違いが腹落ちしていないと、管理職はいつまでも自分の能力で勝負し続けます。

部下より自分が詳しいこと。
部下より自分が早いこと。
部下より自分が成果を出すこと。

そこに価値を置き続ける。

すると、部下が成長するほど、自分の価値が下がったように感じてしまいます。

しかし、実際は逆です。

自分がすべてやらなくても、部下が考え、判断し、成果を出せる。

それは、管理職としての役割が機能している状態です。


部下が自分を超えることは、管理職としての負けではない

部下が、自分より高い専門性を身につける。
自分より良い提案を出す。
自分では達成できなかった成果を出す。

これは、管理職の存在価値がなくなったということではありません。

むしろ、その部下が力を発揮できる仕事を任せ、必要な支援をし、成長できる環境をつくれたのであれば、それは管理職としての成果です。

見るべきなのは、

「自分と部下のどちらが優秀か」

ではありません。

「チーム全体の力が高まっているか」です。

自分一人が100の成果を出すチームよりも、部下が育ち、チーム全体で300の成果を出せる方が、組織としては強い。

その状態をつくることが、管理職に期待されている仕事です。

優秀な部下を抑えることではありません。

自分より優秀な部分を持つ部下を活かし、さらに力を発揮できるようにすることです。


分かっていても、簡単には切り替えられない

ここまで読んで、

「そんなことは分かっている」

と思う管理職もいるでしょう。

理屈では、部下が育つことは良いことだと分かっている。
自分より優秀な人材を活かすべきだとも分かっている。

それでも、気持ちがついてこない。

部下に仕事を任せると、自分の仕事がなくなるように感じる。
現場に入らないと、自分が役に立っていない気がする。
部下が評価されると、自分の評価が下がったように感じる。

こうした戸惑いは、決して珍しいものではありません。

なぜなら、多くの管理職は、昇格した瞬間に役割だけ変えられ、その役割転換を十分に支援されていないからです。

昨日までは、

「自分で考えろ」
「自分で成果を出せ」
「誰よりも仕事を覚えろ」

と言われてきた。

ところが管理職になった途端に、

「部下に任せろ」
「部下を育てろ」
「自分で抱えるな」

と言われます。

かなり大きな転換です。

それを本人の意識だけで何とかしろと言うのは、少々無理があります。


これは管理職個人の器だけの問題ではない

優秀な部下に脅威を感じる管理職を見ると、会社はつい本人の性格の問題にします。

「器が小さい」
「部下を信じられない」
「管理職としての自覚が足りない」

もちろん、本人が向き合うべき課題はあります。

ただ、それだけで終わらせると、同じ問題が繰り返されます。

多くの会社では、プレイヤーとして成果を出した人を管理職に昇格させます。

それ自体は自然です。

しかし、昇格後に、

プレイヤー時代と何が変わるのか。
何を手放す必要があるのか。
管理職として何に価値を置くのか。
どのような行動を求めるのか。

ここまで明確に伝えられているでしょうか。

役職だけ与えて、あとは本人任せ。

それでは、管理職はこれまでの成功体験を使い続けます。

自分で動く。
自分で解決する。
自分で成果を出す。

その方が慣れているからです。

会社が管理職をプレイヤー時代と同じ数字や実務成果だけで評価していれば、なおさら部下に任せることはできません。

「部下を育てろ」と言われながら、自分の数字も落とすなと言われる。

これでは、管理職は自分で成果を出すことを優先します。

優秀な部下への脅威は、管理職本人の器だけでなく、会社が役割転換を支えられていないことからも生まれます。


会社として育てるべき管理職像

会社として育てるべきなのは、自分が一番できる管理職ではありません。

自分より優秀な部分を持つ部下を活かせる管理職です。

部下の強みを認められる。
必要な仕事を任せられる。
成果を横取りせず、正しく評価できる。
部下の成功を、チームの成果として喜べる。
さらに成長できる機会と支援を提供できる。

そうした現場リーダーです。

管理職だからといって、すべての部下より優れている必要はありません。

むしろ、部下それぞれの強みを見つけ、自分にはない力を組み合わせることが重要です。

「自分が一番」であることに価値を置くのではなく、

「このチームだから成果が出せる」

という状態をつくる。

そこに、管理職としての価値があります。


会社として整えるべきこと

会社として必要なのは、管理職に「部下を信じなさい」「もっと任せなさい」と言うことだけではありません。

まず、管理職の役割を明確に切り替える必要があります。

自分で成果を出す人から、部下を通じて成果を出す人へ。

その違いを、昇格時にきちんと言語化することです。

また、管理職の評価も見直す必要があります。

本人の売上や実務成果だけではなく、

部下に仕事を任せているか。
部下ができる仕事を増やしているか。
部下の強みを活かしているか。
次のリーダー候補を育てているか。
自分がいなくても回る現場をつくれているか。

こうした視点も、管理職の成果として扱う必要があります。

さらに、優秀な部下への関わり方を、管理職個人のセンスに任せないことも重要です。

どこまで仕事を任せるのか。
本人の強みをどう活かすのか。
さらに成長させるために、どんな機会を渡すのか。
上司と部下の役割をどう整理するのか。

こうした具体的なケースを管理職同士で共有し、上司や人事が支援できる状態をつくる。

そこまであって、初めて管理職は安心して役割を変えていけます。


おわりに

優秀な部下に脅威を感じること自体を、責める必要はありません。

プレイヤーとして成果を出し、その力を評価されてきた人ほど、自然に起こり得る感情です。

ただし、部下と同じ土俵で競い続ければ、部下の成長も、管理職自身の成長も止まります。

管理職の役割は、自分が一番になることではありません。

部下の力を引き出し、チーム全体を前に進めることです。

部下が自分を超えることは、管理職としての敗北ではありません。

部下が力を発揮できる状態をつくれたという、管理職としての成果でもあります。

そして、この役割転換を本人の器や人柄だけに任せてはいけません。

会社として、

管理職に何を期待するのか。
どのような行動を評価するのか。
プレイヤーから管理職への転換をどう支えるのか。

そこを整える必要があります。

優秀な部下を抑える管理職ではなく、優秀な部下をさらに活かせる現場リーダーを育てる。

それが、会社としての管理職育成です。


現場リーダー育成に課題を感じている企業様へ

管理職が、優秀な部下に仕事を任せられない。
自分で成果を出すことから抜けられず、部下と競ってしまう。
店長・SV・係長・主任がプレイヤー止まりになっている。
昇格後の役割転換が、本人の経験や人柄に任されている。

このような課題を感じている企業様は、一度、現状を整理することをおすすめします。

表面的には、管理職本人の性格や意識の問題に見えるかもしれません。

しかし実際には、会社として管理職に求める役割、評価基準、任せ方や育成行動が曖昧なことに原因がある場合も少なくありません。

現場リーダー育成・管理職育成に課題を感じている企業様は、以下のフォームよりご相談ください。

現場リーダー育成 課題整理フォーム
このフォームは、店長・SV・係長・主任など、現場リーダーの育成に課題を感じている企業様向けの課題整理フォームです。「管理職がプレイヤーから抜けられない」「部下に任せられない」「注意・指導ができない」「1on1や面談が形骸化している」「研修を...

貴社の状況を伺ったうえで、現場リーダー育成のどこに詰まりがあるのか、どこから整えるべきかを整理します。

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