突然の退職勧告──挫折が教えてくれた“人を大切にするリーダーシップ”

マインド

忘れられないクリスマスの記憶

数年前の12月25日、クリスマスの正午、私は外資系フードサービスチェーンの日本法人で経営陣の一人として働いていました。その日の社長との電話ミーティングで、突然こう告げられました。

「来月で俺とお前は退職だ」

従業員を大切にする姿勢に惹かれて入社したこの会社。実際、入社後も従業員育成やケアの面では素晴らしい環境でした。しかし、業績が低迷する中での突然の退職勧告。周囲は「外資だからね」と軽く言いますが、本人や家族にとっては一気にお先真っ暗になる出来事でした。

チームへの最後の責任

退職勧告から年が明けてすぐ、本国の副社長が来日し、全社員を集めて社長と私の退職理由を説明する会が開かれました。説明は「グローバル戦略の一環」であり、「合意の上での決定」とされていました。

私がこの話を事前に知ったのは、社長との電話だけ。他の経営陣や上司からは何の説明もありませんでした。それでも、従業員の前で私は笑顔で「みんな、次の体制でも頑張って」と語りかけました。心の中では納得できない思いもありましたが、それを口にすることは最後までありませんでした。

チームメンバーの中には「納得できません!」と声を上げる人もいました。しかし、私はその意見に同調せず、むしろ新体制に前を向いて取り組むよう説得しました。それが経営層としての最後の責任だと感じたからです。

リーダーシップの軸を見つけた瞬間

人を大事にする、従業員の幸せを最優先にする──。そんな言葉を掲げる企業は多いですが、経営が厳しい時ほどその真価が問われます。私が選んだその会社も、経営判断として間違っていたとは思いません。ただ、人を大切にする理念がどこかで置き去りにされていたことには、失望を覚えました。

その経験を通じて、私は自分のリーダーシップの軸を「人を大切にする」に決めました。それは単なる言葉ではなく、本気で実践する覚悟を伴うものでした。

次なるステージへのつながり

最近、退職後に別の道を歩んでいた元社長から連絡がありました。彼はコンサル会社を立ち上げ、「また一緒に仕事をしよう」と言ってくれました。その会社のホームページには、彼らしいスローガンが掲げられていました。

「ピープルファーストマネジメントで、全ての人が誇りとやりがいを持って生きる世界をつくる」

この言葉を見て、私も改めて思いました。どんな逆境でも「人を大切にする」という姿勢を貫くこと。それがリーダーにとって最も大切な資質ではないかと。

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