はじめに
新任リーダーとして日々、成果を追い求める中で、目に見えない「支え」に目を向ける余裕がないことは珍しくありません。しかし、チームや組織が前に進むための基盤を守る存在に気付くことこそが、リーダーとして、そしてチームとしての本当の成長につながります。
正常を守る人々の重要性
多くの企業では前年比〇〇%達成、コスト削減〇〇%といった成果が評価の対象となります。しかし、これらの結果を支えているのは、日々「正常」を守る人々です。人事、経理、保守、清掃といった部門の人々が、「現状」を安定させることで、組織が安心して挑戦できる環境を整えています。
こうした役割は目立たず、成果が数値に現れにくい分、評価されにくい傾向があります。しかし、リーダーとして「正常を守る人々」の価値を理解し、感謝の気持ちを持つことは、チーム全体の成長に繋がる重要な視点です。
エピソード:気付きをもたらした部下の存在
私が人事部門に異動して間もない頃の女性部下とのエピソードについて紹介させて下さい。彼女は退職者対応を専門に担っており、時には非常にデリケートな事情を抱えるケースも多くありました。その日も、ハラスメントが原因で退職を決めた方の処理を依頼しました。彼女はその対応を滞りなく終え、冷静に完了報告をしてくれました。
その際、私はふと「これまでのやり取りはきっと大変だったでしょう。ありがとうございます」と何気なく声をかけました。彼女はその時は軽く頷いた程度でしたが、後日、彼女の同僚から「彼女、涙を流して喜んでいました。今まで労いの言葉をもらったことがなかったと言っていました」と教えてもらいました。
彼女は何年も退職者対応を担っており、そのプロセスがどれほど神経を使い、時に心を痛めるものだったか想像に難くありません。しかし、その重要性が目立ちにくい役割であったため、感謝や労いの言葉をもらうことがなかったのです。私の一言が彼女にとって大きな意味を持つものだったことを知り、改めて「正常を守る仕事」の重さと、それを担う人への感謝の大切さに気付かされました。
リーダーとしての視点を広げる
これは人事だけの話ではありません。営業や現場にも「正常」を守る人がいます。日々のオペレーションを支え、トラブルを防ぎ、環境を整えてくれる存在です。リーダーとして、彼らの努力を見逃さず、感謝の言葉をかけることは、チーム全体の士気を高める力となります。
「ありがとう」「大変でしたね」「助かっています」という一言が、支えとなる人々のモチベーションを大きく変えます。その結果、チームがより一丸となり、大きな成果を上げる基盤が生まれます。
おわりに
リーダーとして成果を追うのは重要な役割です。しかし、それと同じくらい大切なのは、成果を支える「正常」を守る人々に感謝を伝えることです。あなたのほんの一言が、彼らの努力を報い、笑顔を引き出すことができます。そんなリーダーであることで、あなた自身もチームも、さらなる成長を遂げることができるでしょう。