リーダーの優しさは弱さじゃない——厳しさより“信じて待つ覚悟”がチームを強くする

コミュニケーション

はじめに

「もっと厳しくしないといけないのか…」
「自分は優しすぎるのかもしれない」
「なめられているんじゃないか…」

部下に対して“優しく接している自分”に、
モヤモヤした気持ちを抱えたことはありませんか。

  • 注意するときも、きつく言えない
  • しんどそうな部下を見ると、つい仕事を引き取ってしまう
  • できていないところより、頑張っているところが先に目につく

そんな自分に、ふと

「これって、リーダーとして弱いのかな…」
と凹んでしまう。

でも、本当にそうでしょうか。


「優しい=甘い」と言われる怖さ

優しくすると、ときどきこんなことを言われます。

  • 「もっと厳しくしないとダメだ」
  • 「そんなに甘かったら、部下が育たないよ」
  • 「管理職なんだから“情”より“結果”でしょ」

言っていることも、分からなくはない。
だからこそ、自分の中で迷いが生まれます。

「もしかして、自分はリーダーとして“甘い”だけなのかも」

ここで多くの人が、「優しさ」を封印しようとします。
でも、その前に一度、立ち止まって考えてみてほしいんです。


相手に厳しくするよりも、「信じて待つ」方がずっと難しい

本当に難しいのは、
感情をぶつけて厳しく叱ることではありません。

「この人は、きっとできる」と信じて、
その人が自分で動き出すのを待つこと。

これは、口で言うほど簡単ではありません。

  • 「また同じミスをするんじゃないか」
  • 「このままだと、自分の評価にも跳ね返ってくるかもしれない」
  • 「上からも数字を詰められているのに…」

そんな不安を抱えながら、
それでも相手を信じて、任せて、見守る。

これは、“何もしない優しさ”ではなく、
**不安を飲み込んだ上での「覚悟のある優しさ」**です。


厳しさだけで動かすと、チームに何が起きるか

もちろん、厳しさがまったく不要という話ではありません。
ただ、「厳しさだけ」で動かそうとすると、
チームにはこんなことが起きやすくなります。

  1. 指示がないと動かないチームになる
    「怒られないライン」を基準に動くようになり、
    自分から考えたり、提案したりする人が減っていきます。
  2. 本音が出てこなくなる
    「こんなこと言ったら叱られるかも」という恐怖から、
    ミスの芽や違和感が、現場で握りつぶされてしまいます。
  3. 短期的な数字は出ても、長期的に人が育たない
    一時的には結果が出ても、
    人が疲弊し、離れ、残った人も“言われたことだけやる人”になってしまう。

厳しさだけのマネジメントは、
「動く」ように見えて、“自分のアタマで考える力”を奪っていく危険なやり方でもあります。


優しさで動く瞬間が、チームの本当の強さ

一方で、
「優しさ」に支えられた行動には、違うエネルギーが宿ります。

  • 「自分のことをちゃんと見てくれている」
  • 「失敗しても、まずは話を聞いてくれる」
  • 「本気で成長を願ってくれている」

そんな感覚を持てる上司のもとでは、
部下は**「やらされる」から「やりたい」に変わっていきます。**

そしてある時、こういう瞬間が生まれます。

  • 誰に言われなくても、自分から一歩踏み出す部下
  • 部下同士でフォローし合うチーム
  • 上司の期待を先回りして動こうとするメンバー

これこそが、
優しさによって生まれる“自走するチーム”の姿です。


優しさが「甘さ」になってしまうとき

とはいえ、優しさがすべて正義、というわけでもありません。
優しさが“甘さ”になってしまうのは、例えばこんなときです。

  1. 伝えるべきことを飲み込んでしまうとき
    ミスや問題点を分かっていながら、
    相手に嫌われたくなくて何も言わない。
  2. 基準やルールをあいまいにしたままにするとき
    「まあ、いいか」と毎回その場しのぎで流してしまい、
    結果としてチームの基準が下がっていく。
  3. 相手の成長の機会を“先回りして奪ってしまう”とき
    「かわいそうだから」「大変そうだから」と、
    本来その人が挑戦すべき仕事を、全部自分が引き取ってしまう。

ここには、
“相手を想う気持ち”と“自分を守りたい気持ち”が混ざっていることも多いです。

だからこそ大事なのは、

「優しいかどうか」ではなく、
その優しさが“相手の成長につながっているかどうか”

を、一度立ち止まって見つめなおすことです。


優しさを「リーダーシップ」に変えるための3つのヒント

優しさを、ただの甘さで終わらせず、
“リーダーとしての力”に変えるためのヒントを3つだけ。

  1. 事実はきちんと伝え、人格は否定しない
    「ここができていない」という事実は曖昧にせず、
    「あなたはダメだ」と人格にラベルを貼らない。
  2. プロセスと努力をきちんと見て言葉にする
    結果だけでなく、そこに至るまでの工夫や試行錯誤をちゃんと拾ってあげる。
    「見てくれている」という感覚が、部下の自発性を引き出します。
  3. “待つライン”と“ここからは言うライン”を自分なりに決めておく
    どこまで見守り、どこからはきちんと伝えるのか。
    事前に自分の中に軸を持っておくことで、
    優しさも厳しさも「ぶれない一貫性」として伝わります。

おわりに

リーダーの優しさは、弱さではありません。

相手を信じて、
相手が自分で動き出す瞬間を信じて、
それを待つ“覚悟”があるのなら。

それは立派なリーダーシップです。

厳しさで一瞬動かすことはできます。
でも、優しさで火がついた行動は、
自分自身の中から湧き上がるエネルギーとして続いていきます。

優しさでチームの成長を信じられる人は、
本当は、誰よりも強い人かもしれません。

どうか、自分の優しさを「弱さ」だと決めつけないでください。
その優しさを、あなたなりのリーダーシップのかたちとして、
これからも大事にしていってほしいなと思います。


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