顧客不在を断つ判断基準—「誰が嬉しいか」で決めるリーダーの仕事

マネジメント

はじめに

リーダーとして意思決定をする場面では、根拠やデータ、原理原則に基づく判断が求められます。
もちろんそれは大切なことです。感覚や思いつきで決めていては、チームを迷わせてしまうからです。

でも――気づかないうちに、こんな状態になっていませんか?

  • データや会議資料の比較にばかり時間を使ってしまう
  • 「論理的に正しい」ことを優先するあまり、現場の声が抜け落ちている
  • 気づいたら「誰のためにやるのか」が見えなくなっている

意思決定の先にいるはずの「お客様」を忘れ、チーム内での正しさだけを求めてしまう。
それはまさに顧客不在の意思決定です。


あるある:顧客不在に陥る意思決定(5つ)

あるある①:数字に振り回される

前年比や達成率などの数字を追うこと自体は大切です。ですが、それが唯一の基準になると、「数字を達成すること=目的」になってしまいます。数字の裏には必ず“人の喜びや不満”があるはずなのに、そこに目が向かなくなるのです。

あるある②:会議の議論が自己満足に

会議で「理論的に正しい」ことばかりが飛び交い、誰も「お客様がどう感じるか」を口にしない。結果として、議論は社内での正しさの競い合いになり、実際に現場でどう受け止められるかは二の次になります。

あるある③:成功事例の焼き直し

「過去にこれで成果を出したから」とそのまま使う。けれども、お客様の価値観や生活は変化しています。かつての成功は、今のお客様にとっては“古い”可能性もあるのです。

あるある④:現場の声を軽視する

お客様と直接接しているのは現場のスタッフです。その声を「一部の意見」と片付けてしまうと、机上の理屈に基づいた意思決定になりがち。やがてお客様のリアルな感覚からズレが生まれます。

あるある⑤:社内の承認や上司の顔色が優先される

「上層部が納得するかどうか」「承認プロセスを通せるかどうか」がゴールになる。お客様より社内の安心が優先され、結果的に顧客不在のまま意思決定が進んでしまいます。


顧客不在の未来(3つのリスク)

顧客不在の意思決定が積み重なると、次のような悪循環に陥ります。

  1. お客様が離れていく
    「なんとなく合わない」「ここじゃなくてもいい」と感じたお客様は、静かに他社へ移っていきます。一度離れたお客様を呼び戻すのは容易ではありません。
  2. 部下のやる気が失われる
    「誰のためにやっているのか」が見えないまま数字や承認ばかりを追うと、部下は仕事に誇りを持てなくなります。次第に“顔色をうかがうこと”が仕事の中心となり、主体性が消えていきます。
  3. 組織の信頼が揺らぐ
    顧客不在の判断は外部からも透けて見えます。「この会社、なんだかお客様の方を見ていない」と思われた瞬間、ブランドもリーダーの信頼も一気に失われます。

顧客不在になりがちなリーダーの特徴(5つ)

特徴①:資料や数字に安心を求める

データが揃わないと決断できない。確かに数字は頼りになりますが、「数字があるから安心」と思っている時点で、すでに顧客の感情は見落とされています。

特徴②:失敗を極端に恐れる

「間違えたくない」との思いから、原則論に逃げ込みがち。失敗しない代わりに、顧客に感動を与えるチャンスも失っています。

特徴③:現場に足を運ばない

会議室での議論ばかりに偏り、実際にお客様と触れ合う場に出ない。すると「お客様が何を感じているか」を肌でつかめなくなります。

特徴④:部下の意見を拾わない

「理屈に合わないから」と退けてしまうと、現場の感覚を失います。部下の声の奥には、お客様のリアルな声が隠れているのに。

特徴⑤:上層部への説明ばかり意識する

「上司に説明できるように」が基準になり、お客様視点がすっぽり抜け落ちる。承認がゴールになった瞬間、顧客不在の決定が生まれます。


実践のヒント:顧客目線を取り戻す5つの問い

意思決定の場で、こんな問いを投げかけてみてください。

  1. 「それって誰が嬉しいの?」
    最終的に笑顔になるのは誰か。数字の達成ではなく、具体的に喜ぶ“人”を思い浮かべられるかが大切です。
  2. 「お客様は本当に喜んでくれるの?」
    社内論理や効率性ではなく、目の前のお客様が「ありがとう」と言ってくれるかを基準にしましょう。
  3. 「現場の声と合っている?」
    お客様に接しているスタッフの感覚とズレていないか。ここが一致していないと、施策は机上の空論になります。
  4. 「過去のやり方を引きずっていない?」
    昔の成功体験を繰り返していないか。お客様の価値観は常に変化しています。立ち止まって見直す習慣が必要です。
  5. 「これでチームは誇れる?」
    「これはお客様に胸を張って届けられる仕事か?」と問い直すだけで、判断の軸がブレなくなります。

顧客目線を取り戻した未来(5つの成果)

顧客不在を克服すると、組織にはこんな前向きな変化が訪れます。

  1. お客様の満足度が安定する
    「喜んでもらうこと」を全員が意識するため、サービスの質が揺らがなくなります。
  2. 部下が主体的に動ける
    承認や顔色ではなく「お客様のためにどうするか」が判断軸になることで、自分で考えて行動する部下が育ちます。
  3. 意思決定がスピーディーになる
    「お客様にとってどうか」というシンプルな基準があれば、余計な議論をせず早く動けます。
  4. チームの一体感が強まる
    目的が「上司の承認」ではなく「お客様の満足」になることで、チーム全員が同じ方向を向けます。
  5. リーダーへの信頼が自然と高まる
    「この上司なら安心してお客様を見られる」と部下が感じ、信頼と尊敬が積み重なっていきます。

あなたに伝えたいこと

データや原則に基づく意思決定は間違っていません。
ただし、それに頼りすぎると「顧客不在」になり、どんなに正しくても価値を生み出さなくなります。

リーダーとして大切なのは、お客様が最後に喜んでくれるかどうかを問い続けること。
そして、顧客目線を取り戻したチームには――

  • 成果が安定し
  • 部下が育ち
  • 信頼が積み上がる

そんな未来が必ず訪れます。

今日からやってみてください。

  • 「誰が嬉しいのか?」を問いかける
  • 「お客様は本当に喜ぶのか?」と想像する
  • 「現場と合っているか?」を確認する

小さな問いかけの積み重ねが、チームの軸をお客様に戻します。
その先にあるのは、数字以上に強い「信頼」と「成果」です。


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