はじめに
「どうして部下は、私の言ったことをちゃんとやってくれないんだろう?」
リーダーとして歩み始めたとき、多くの人が必ず抱える悩みです。
- 部下がこちらを見ているかどうか気になって仕方がない
- 自分の指示が正しく伝わっているか不安になる
- 部下の行動が「自分の期待どおりか」を常にチェックしてしまう
これは、新任管理職やリーダー層にとってごく自然な心理です。
でも、そこに大きな落とし穴があります。
部下が本当に見るべき相手は、上司である「あなた」ではありません。
目の前にいる「お客様」です。
リーダーを信頼し、安心感を持てているときにこそ、部下は自信を持ってお客様に集中できる。
今日は「部下がお客様の方を見られるチーム」をつくるために大切なことを、一緒に整理していきましょう。
あるある:部下が“上司ばかり”見てしまう現場
あるある①:会議で上司の顔色を探る
部下に意見を求めても、ちらちらと上司の反応を見ながらおそるおそる発言。
「間違ったらどうしよう」「変に思われたら嫌だ」と思うと、本音や新しい意見は出てきません。
結果、会議は活発にならず、形だけのやり取りに終わる。
あるある②:報告・承認ばかりで止まる仕事
「これは自分で判断して大丈夫かな?」と迷い、何でもかんでも上司に確認。
本来ならすぐにできることも、「報告してOKをもらうまで」がセットになってしまい、スピードが落ちる。
その間にお客様対応が後回しになり、タイミングを逃す。
あるある③:接客中に上司の視線を気にする
お客様の前に立っているのに、頭の中は「後で上司にどう言われるかな?」でいっぱい。
笑顔がぎこちなくなり、会話の中身も浅くなる。
お客様から見れば「心ここにあらず」に感じられ、満足度は下がる。
あるある④:評価されることがゴールになる
「お客様に喜んでもらえたか」よりも、「上司に褒められたか」が行動の基準。
上司が見ている場面だけ頑張り、見ていないときは手を抜く。
これではお客様にとってのサービスは安定せず、信頼が積み重なりません。
あるある⑤:挑戦より“叱られない”を優先
新しいことに挑戦するよりも、「失敗して怒られないこと」が優先される。
結果、部下は守りの姿勢に入り、現状維持が当たり前になる。
お客様からすれば「いつも同じ対応で新鮮さがない」と感じられる。
上司ばかり見てしまう組織の“リーダーの特徴”
――症状の次は、原因を見にいきましょう。部下が上司ばかり見る背景には、リーダー側のふるまいが必ずあります。心当たりがあれば、今日から一つずつ外していけばOKです。
特徴①:指示が細かすぎて、しかも後出しで変わる
マイクロマネジメント+方針の揺れ。
「そこまで口出しする?」「さっきと言ってることが違う…」が積み重なると、部下は自分で考えるより“正解探し”を優先します。
特徴②:評価基準が“上司の好み”に寄っている
成果や顧客価値より「上司の好き嫌い」で評価のムードが決まる。
部下は自然と“上司ウケ”を狙い、視線はお客様から上司へと移動。
特徴③:ミスへの反応が厳しすぎる(成功=怒られないこと)
失敗報告のたびに詰問や皮肉が飛ぶ。
「次はどう活かそう?」ではなく「なぜやらない?」が先に来る組織では、挑戦は起きません。
特徴④:報連相の“型”だけ重視し、顧客価値の言語化が弱い
「様式・頻度・形式」は細かいのに、「誰の、どんな価値を最大化したいか」の対話が少ない。
部下は“型に沿う”ことに最適化され、顧客を忘れます。
特徴⑤:会議や1on1が“上司の正解発表会”になっている
問いが少なく、結論は最初から上司の頭の中に。
反対意見が出にくい空気では、部下の思考は止まり、上司の顔色を読むのが最適解になります。
その未来:上司ばかり見ているとどうなるか(5つの負の連鎖)
- 判断が遅くなる
お客様の前で「一旦上司に確認します」が増え、スピード感が失われる。 - サービスの質が下がる
お客様に集中できないため、対応が形だけになり「伝わる心」が欠ける。 - 部下が育たない
指示待ち・承認待ちが当たり前になり、主体性が育たない。 - 上司も疲弊する
「自分が見ていないと部下は動かない」と感じ、管理ばかりが増える。 - お客様不在の組織になる
気づけばチーム全体が「上司のために働く組織」になり、お客様満足は二の次に。
最終的には、お客様を喜ばせるための仕事が「上司のための仕事」にすり替わってしまうのです。
部下からの視点
ここで、部下の心の中をのぞいてみましょう。
- 「上司にどう見られているかが気になる」
- 「期待を外したら叱られるかもしれない」
- 「余計なことをして怒られるくらいなら、何もしない方がいい」
これは怠けているのではありません。
安心して動ける環境がないから、動けないのです。
リーダーの視線ばかりを気にして働く環境では、部下は常に緊張しています。
お客様対応も「間違えないこと」が最優先となり、心からの笑顔や主体的な提案は出てきません。
結果として、「上司に合わせることはできるけれど、お客様に感動を与える力は育たない」状態が続きます。
本当に目指すべき未来:部下がお客様だけを見る状態
理想の姿は、部下の視線が完全にお客様に向いているチームです。
- 判断の基準が「上司にどう思われるか」ではなく「お客様にどう感じてもらえるか」になる
- お客様の反応に集中できるから、対応の質が自然と高まる
- 迷わず行動できるため、スピードと安定感が増す
- チーム全体が「お客様のために動く文化」に染まる
- 結果的に上司の信頼も「自然と」上がる
これは「部下が勝手にそうなる」のではなく、リーダーへの信頼と安心感があってこそ実現する姿です。
「この上司なら大丈夫」と思えるからこそ、部下はお客様に100%の意識を向けられるのです。
ではどうすれば?(実践のヒント)
1. 上司は監視者ではなく支援者に
部下が「見張られている」と感じれば感じるほど、お客様は二の次になります。
「困ったら助けてくれる存在」だと思えるだけで、部下は安心してお客様に向き合えるようになります。
2. 部下を信じて任せる
細かいことまで管理するのではなく、「方針」と「ゴール」だけを示す。
任された部下は「信じてもらえている」と感じ、責任感と主体性を発揮します。
3. ミスを責めず、学びに変える
失敗を「なぜやらなかった」と叱るのではなく、「次にどう活かせるか」と問いかける。
この姿勢が、安心と挑戦を後押しします。
4. お客様の声を共有する
朝礼やミーティングで「上司の評価」ではなく「お客様からの声」を取り上げる。
それだけで、部下の関心は自然と「お客様」へと向かいます。
5. 日常の会話に「お客様」を登場させる
ちょっとした雑談や指示の中に「お客様がどう思うか」を織り交ぜる。
「上司がどう思うか」ではなく「お客様にどう映るか」を日常で意識づけることで、行動の軸が自然にお客様へシフトしていく。
あなたに伝えたいこと
部下の視線を「自分に向けること」に力を注ぐのは、リーダーとして自然な行動です。
でも、それでは部下はいつまで経っても「上司のために働く人」のままです。
本当にリーダーに求められるのは、部下をお客様に向かわせる力です。
その入口は、実は派手なスキルではありません。
- 安心を渡すこと。「困ったら一緒に考えるよ」「次に活かそう」の一言を惜しまない。
- 意図を示すこと。 何のためにその仕事をするのか、誰のために時間を使うのかを、短い言葉で語る。
- 任せること。 正解を配るのではなく、ゴールと枠を渡して、判断を委ねる。
あなたが“安心の基盤”になったとき、部下は初めて視線をお客様へと固定できます。
そして「上司のための仕事」は「お客様のための仕事」に戻り、成果も信頼も、じわじわと積み上がっていきます。
今日からやってみてください。
- 朝礼で「昨日、誰にどんな価値を渡せた?」と聞く
- 1on1で「その判断、お客様はどう受け取るかな?」と問いかける
- 失敗報告に「よし、次の一手は?」と返す
小さな言葉の積み重ねが、部下の視線を変え、チームの質を変えます。
「お客様の方を向く部下」を育てられるリーダーが、最終的には一番信頼されるリーダーです。
ご案内
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