はじめに
「ちゃんと伝えたのに、なぜか期待通りの成果が出てこない」
「内容は合っているのに、熱量がない。やらされ感がにじんでいる」
「一応やってはいる。でも、当事者意識を感じない」
そんなモヤモヤを感じたこと、きっとあるのではないでしょうか。
しかもこれ、ちょっとした伝え方の問題では終わりません。
成果物そのもの(アウトプット)に加えて、熱量・モチベーション・当事者意識といった“目に見えにくい部分”まで影響してきます。
この状態が続くと、結果として、
- チームが動かない
- 成果が出ない
- 上司への信頼が下がる
といった悪循環に陥りかねません。
でもここで、「じゃあ、もっと強く言えばいいのか?」と思うのは早計です。
むしろ逆。上司側の“伝え方”に、無自覚な落とし穴があることがほとんどです。
この記事では、そんな「伝えているのに伝わっていない」状況を引き起こす3つの落とし穴と、その具体的な対策についてお話しします。
落とし穴①:期待水準が曖昧(6W3Hが抜けている)
多くの指示が、「何を・いつまでに」くらいの粒度で終わっていませんか?
もちろんそれでも最低限の仕事は進みますが、
期待していたレベルとは“ズレた成果”が返ってくることが少なくありません。
たとえば、
- 提出期限には間に合っているけれど、クオリティが想定以下
- 資料は作られているけれど、論点がずれている
- 報告は来るけれど、温度感がまるで違う
こういうとき、部下側からすれば「言われた通りにはやった」状態なんです。
でも、上司が求めていたのは**“ただやる”ではなく、“一定水準以上でやる”**ことだったりします。
つまり、**伝えた側の「当たり前」が、受け取った側には「説明されていない」**というズレが生まれているんですね。
ここで活用したいのが、6W3Hです。
【6W3Hとは】
- Why(なぜ)
- What(何を)
- Who(誰が)
- Whom(誰に対して)
- When(いつまでに)
- Where(どこで)
- How(どうやって)
- How many(どれくらいの量)
- How much(どれくらいの質/深さ)
この「How much(どれくらいの質)」が特に抜けがちです。
たとえば指示を出すときに、
「先週のアンケートをまとめておいて」ではなく、
「来週の会議で使うので、上位5つの意見をグラフにして、2~3行で傾向分析まで含めておいて。A4用紙1枚でまとめたい」
といった具合に具体的な完成イメージ・使い方・重視ポイントまで伝えることで、部下が期待水準を正確に把握しやすくなります。
落とし穴②:「何をどうやるか」は伝えても、「なぜやるか」が抜けている
これが最も大きな落とし穴かもしれません。
「これを、こうやって、いつまでにやっておいて」──
ここまでを伝えているマネジャーは多いです。
ただ、それだけでは部下のやらされ感は拭えません。
本来、仕事に「意味」や「目的」が感じられれば、人は自然と前のめりになります。
逆に、“やる理由”が見えない仕事には、熱量も当事者意識も生まれません。
たとえば、報告資料の作成を依頼する場面でも、
「なんでこれが必要なのか」
「この資料を見て誰がどう判断するのか」
「その判断が、どんな成果や影響につながるのか」
ここまでをセットで伝えることで、
部下は単なる「作業者」ではなく、「チームに貢献する一員」として仕事に向き合うことができます。
しかもこの“目的の共有”は、部下にとってだけでなく、上司側にも大きな意味があります。
「なぜやるか」を明確に持っていれば、
途中で判断に迷ったときも目的に立ち返って対応できますし、
やる意味が曖昧なら、その仕事自体の優先順位を見直すきっかけにもなるからです。
落とし穴③:言いっぱなし。フォローがない
そして最後に、地味ですがとても大きいのが「言いっぱなし」です。
- 指示を出したあと、確認しない
- 話しただけで、どこまで伝わったか確かめない
- 任せたつもりが、放置になっている
こういった状況では、部下は「この仕事って、本当に大事なのかな?」と感じます。
そうなると、当然モチベーションは上がりません。
逆に、**上司側がその仕事に関心を持っていないように見えると、部下も同じように“温度が下がる”**のです。
【ここで大事な2つのアクション】
- 指示のあとに「今どう受け取ったか」を確認する
→「ここまでの指示で不明点ある?」ではなく、「じゃあ、どう進めてくれそう?」と部下に要約してもらう方が効果的。 - 途中でのフォローと承認を入れる
→「見てるよ」「進めてくれてありがとう」といった小さな声がけで、当事者意識や責任感が生まれる。
解決のヒント:「やらせる」から「自分ごとにさせる」へ
指示を出す目的は、「部下を動かす」ことではありません。
本当のゴールは、部下が自分の頭で考え、自発的に動く状態をつくることです。
そのためには、
- 指示は細かく伝えるのではなく、“共有する”
- 部下に「判断」や「工夫」の余地を残す
- そして、意味や意図をセットで伝える
こうした工夫によって、部下の“動きの質”が変わってきます。
部下に求めているのは、「ただやる」ことではなく、
**“成果につながる形でやる”こと、かつ“前向きに取り組むこと”**ではないでしょうか。
そのためには、**「どう伝えるか」より、「どんな状態をつくるか」**を意識するのがポイントです。
おわりに
「ちゃんと伝えたのに動かない」は、部下の問題ではありません。
多くの場合、上司が“伝えたつもり”になってしまっているだけです。
部下が成果を出し、前向きに動ける状態をつくるのは、上司の大切な役割のひとつ。
でも、それは決して難しいテクニックや強いリーダーシップが必要なわけではありません。
- 期待水準を明確にする(6W3H)
- 目的を共有する
- 言いっぱなしにせず、対話を続ける
こうしたシンプルな工夫の積み重ねで、
「なんか最近、チームがよく動くようになった」
「一体感が出てきた」と感じられる日が、きっとやってきます。
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