はじめに
新任リーダーになったばかりの頃、部下やチームメンバーの悩みにどう向き合えばいいのか、戸惑うことはありませんか?
「何かアドバイスをしなきゃ」「正解を導いてあげなきゃ」と思うあまり、余計なプレッシャーを感じてしまうこともあるでしょう。でも、本当に必要なのは、アドバイスではなく、相手の背中をそっと押してあげることなのかもしれません。
先日、仕事のことで悩んでいる女性の話をじっくり聞く機会がありました。彼女はさまざまな悩みが入り混じり、「もう嫌だ!」という状態になっていました。私が彼女に対して行ったのは、次の3つのステップです。
- テーブルに広げる
- 整理整頓する
- 問いかける
この3つを意識するだけで、相手は自分自身の力で前に進むことができます。リーダーとしてメンバーと向き合う際にも、大いに役立つ考え方です。
1. テーブルに広げる
まず大切なのは、相手の話をじっくり聞くこと。ここでは「まとめよう」とせず、とにかく聴き役に徹します。
彼女も途中で「すいません、何が言いたかったんだっけ…」「ごめんなさい、話がごちゃごちゃですよね…」と、自分の話がまとまらないことを気にしていました。でも、それでいいんです。
「大丈夫ですよ」と安心感を伝えながら、すべてを話し終えるまで待つ。イメージとしては、テーブルの上に頭の中のものをすべて広げてもらう感じです。
このときのポイントは、
- 話をまとめようとしない
- 途中で口を挟まない
- 言い終えても、少し沈黙を置く
とにかく、相手の中にあるものをすべて出してもらいましょう。
2. 整理整頓する
次に、広げたものを一緒に整理整頓します。やり方はさまざまです。
- 事実と感情を分ける
- 時系列に並べてみる
- カテゴリーで分類する
ここで大事なのは、こちらが勝手に法則を決めないこと。あくまで相手と一緒に整理することが大切です。
この作業は「答えを出す」ためではありません。「何がどこにあるのか」を相手が自分で認識できるようにすることが目的です。
3. 問いかける
整理ができたら、それを一緒に俯瞰して眺めながら問いかけます。
例えば、
- 「どの悩みが一番しんどい?」
- 「この悩みがなくなったら、どんな気持ちになる?」
- 「これとこれ、矛盾してない?」
ポイントは、無理に答えを出そうとしないこと。質問と回答を繰り返しながら、少しずつ相手自身の気づきを促します。
すると、相手は次第にこう感じ始めます。
- 「悩みって意外とシンプルかも」
- 「本当に気にしていたのはこれだったのか」
- 「最初に取り組むべきことが見えてきた」
今回の彼女も、最後には「すっきりしました!」と笑顔になりました。
背中を押すということ
ここまで読んで、「結局、何もアドバイスしてないじゃないか」と思ったかもしれません。でも、それでいいんです。
正直、リーダーとしての経験が増えれば増えるほど、部下の悩みに対して「こうすればいいよ」とアドバイスできる場面は増えてきます。ネットで検索すれば、解決策はいくらでも見つかる時代です。
それでも、悩みが尽きないのはなぜでしょうか?
それは、「正しい解答があっても、踏み出せない」からです。
人は感情が動かされないと行動に移せません。だからこそ、リーダーがすべきことは、「正解を教えること」ではなく、「相手の背中を押すこと」なのです。
明日からできること
では、明日からリーダーとして何ができるでしょうか?
- 部下の話をとことん聞く
「何かアドバイスしなきゃ」と思わず、ただ聴くことに集中しましょう。 - 整理を手伝う
話がまとまらなくても焦らず、一緒に整理してあげることで相手の気づきを促します。 - 問いかけてみる
「どうしたい?」「一番困っているのは?」といったシンプルな質問を投げかけるだけでも、相手は自分の中で答えを見つけやすくなります。
おわりに
「部下を成長させなければ」「正しい答えを教えなければ」と思うと、リーダーの役割は難しく感じるかもしれません。でも、もっとシンプルに考えてみましょう。
部下の話を聴き、一緒に整理し、問いかける。そのプロセスを通じて、相手が自分自身の力で前に進むようサポートする。
それが、リーダーにできる「背中を押す」ということなのではないでしょうか。
そんなリーダーが増えれば、きっと職場はもっと前向きで活気のあるものになっていくはずです。