はじめに
「上司が話をきいてくれない」
職場でよく耳にする部下の不満です。これをきいたとき、多くのリーダーは「ちゃんと話をきいてあげればいい」と思うでしょう。確かに、話をきくことは重要です。しかし、それだけで十分とは限りません。
本記事では、部下の声をただきくだけで終わらせない、リーダーとしての本質的な「きく力」とその先に求められる行動について考えていきます。
部下の声を「きくだけ」では信頼を得られない
あるエピソードをご紹介します。
私の部下だったAくんは、リーダーに抜擢され、5名のチームを率いることになりました。私は彼に「メンバーの話をしっかりきくように」と指示をしました。
彼はその通りに行動し、メンバーと話す時間を積極的に設けました。しかし、2ヵ月後、メンバーから「Aが何もやってくれない」とクレームが出てしまいました。
話をきくことで改善提案や意見が多く出てきたものの、Aくんはそれらを処理しきれず、進捗を報告することもなく停滞してしまったのです。結果、メンバーたちは「話をきくだけで動いてくれないリーダー」という印象を持ち、関係が悪化してしまいました。
このエピソードから分かるのは、「話をきく」こと自体は良いスタートですが、その後に適切なアクションを伴わなければ、信頼を築くどころか逆効果になる場合もあるということです。
「話をきく」その先に必要な責任とは
リーダーには、部下の声をきくだけでなく、その声に応える責任があります。それは、必ずしもすべての要望を実現するという意味ではありません。
部下の意見や提案に対して進捗を報告したり、可能な範囲で対応したりすることが大切です。そして、どの意見を採用するか、採用しない場合はその理由を丁寧に説明する姿勢が求められます。
部下の声を「きいて終わり」にしないためには、以下の2点を常に意識しましょう。
- 話をきくことを目的化しない:話をきくだけで満足せず、その先の行動を考える。
- 話をきくことで発生する責任を自覚する:期待を受け止め、適切に対応する責任を果たす。
これを実践することで、部下との信頼関係を築き、チーム全体のパフォーマンス向上につながります。
明日からはじめること
新任リーダーでも明日からすぐに実践できる具体的な行動を挙げます。
- 部下の意見にフィードバックをする
今日中に部下の声をきいた場合、その内容について短くても良いので何かしらのフィードバックを返しましょう。 - タスクの優先順位を整理する
部下からの提案や意見が多い場合は、優先順位を明確にし、どの案件から取り組むかを伝えてください。 - 実行可能な小さな改善を始める
すべてを解決する必要はありません。まずは小さな改善を1つ実行し、成果を見せることから始めましょう。
これらを意識するだけで、「話をきくだけのリーダー」ではなく、信頼を得られるリーダーへと一歩近づけます。
おわりに
「優秀なリーダー」の定義は人それぞれですが、共通して言えるのは、リーダー自身も部下から育てられる存在であるということです。
どれだけ経験を積んでも、役職が上がっても、リーダーとして成長するためには、部下の声に耳を傾け、それを生かす努力が不可欠です。
部下の声をきく姿勢を大切にし、その先の行動に責任を持つことで、あなたは部下から信頼され、共に成長できるリーダーになれるでしょう。
本記事があなたの参考になれば幸いです。